2018年以降、「世界同時不況」が始まる理由 バブル崩壊の「引き金」はどこが弾くのか

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私が本格的なグローバル経済が始まったと考える2001年以降を振り返ってみると、2006~2007年までは米欧の借金バブルによって、世界は好景気を謳歌することができました。ところが、米欧の借金バブルが行き詰まることで、先進国を中心に経済危機が起こった後は、新たに世界経済を下支えするようになったのは、中国を筆頭とした新興国であったのです。

ただし、先進国の中央銀行が大規模な緩和に踏み切るなかで長く続いた超低金利によって、新興国は企業活動の負債依存度を高めることとなり、成長率がカサ上げされていたという現実を見逃してはなりません。

「新興国企業」の債務は2008年比で3倍に

BISの統計では、新興20カ国・地域の企業の債務総額は、2008年末の9兆ドルから2016年3月末には25兆ドルへと3倍近い水準に増えています。同じ期間にこれらの国・地域の名目GDPが1.5倍しか増えていないと比べると、債務の増加率は異常であるといえるのです。さらには、先進国の企業の債務総額が35兆ドル前後と横ばいで推移しているのと比べても、新興国企業の債務の増加が新興国の成長率をカサ上げすると同時に、非常に非効率な経済をつくりあげていることがわかります。

「歴史は繰り返す」というように、先進国の景気が低迷しているときは、新興国や途上国に投資資金が潤沢に流れ込むようになります。そうなれば、投資資金があり余るようになるため、新興国や途上国では銀行の融資基準が甘くなり、企業や家計は身の丈以上の借金をして設備投資や消費を活発化させる傾向が強まっていきます。このような与信バブルが新興国や途上国の経済成長をカサ上げしていたわけですが、歴史の教訓が教えるところでは、こういった借金経済には、必ず大きな落とし穴が待ち受けているものです。

経済を見るうえで重要なのは、世間の雰囲気に左右されることなく、しっかりと現状の問題を直視するということです。すなわち、今後の世界経済に生じる大きな問題点は、世界のあちらこちらで債務が膨れ上がってしまっているということに起因しているのです。

世界全体の負債総額は152兆ドルにまで膨らみ、世界のGDP合計の2.3倍になってしまっています。これは、新興国の企業が債務を急増させただけでなく、先進国、新興国、途上国のいずれもが国家として債務を増やしているという要因も加わっています。実際に、先進主要国で唯一経済が安定している米国であっても、米国債の発行残高は金融危機時に比べて2割も増えていますし、一進一退の日本では、相も変わらず毎年40兆円程度の新発国債が発行され続けているのです。長く続いた超低金利は、国家の借金依存症を改めることができなくなっているのです。

2020年くらいまでの世界経済を考えたときに、まず心配なのは、異常な水準にまで増加した新興国の企業債務です。概して、これらの企業の生産性は著しく悪化している事例が多いからです。その典型例が中国企業であり、企業収益の悪化から、いまだに倒産が相次いでいて、経営者の夜逃げは日常の光景となっているのです。グローバル経済で競争しているかぎり、競争力の低い企業は退場させて債務を削減するしか、経済の効率性を高めることなどできません。そういった意味では、借金依存の経済が拡大し続けることはできないというわけです。

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