「合理化計画に表れる経営者の『本音と建前』」 リチャード・カッツ

「合理化計画に表れる経営者の『本音と建前』」 リチャード・カッツ

ハーバード大学経営大学院のマイケル・ポーター教授は「戦略とは何をすべきかだけでない。何をしてはいけないかというのもまた戦略である」と説く。

 やっと日本企業も“ポーター原理”を理解し始めたようだ。とはいえ、経営者による「ノンコア事業を整理する」という宣言は、どうも“本音”というよりは“建前”にすぎないことが多い。

 日本には伝統的に事業分野を“フルセット”でそろえる経営方針があるようだ。そのため多くの大企業では、深く考えないまま多角化を進めたり、企業グループを拡大しようとしてきた。大手企業の中には、どの製品が収益源になっているのか、どの製品が赤字になっているかを十分に理解することなく、数十、数百、場合によっては数千もの製品を生産してきたところもあった。

 そうした多角化路線とまったく逆の経営をしているのがキヤノンである。同社は独自の光学技術に焦点を当てて製品を絞り込むことで非常に高い収益を上げる企業になったが、それは偶然の所産ではないはずだ。

 幸運というべきか、この10年間の経営環境の変化で、企業は新しい発想をせざるをえなくなってきた。連結決算や連結税制の導入、新しいルールの厳格な適用によって、企業は子会社を利用した損失隠しができなくなった。銀行も不良債権危機の影響で赤字事業に融資をするのを渋るようになっている。その結果、経営者はノンコア事業を整理すると、宣言せざるをえなくなっているのである。

 もし企業がその公約を実行に移せば、日本経済の成長に資することになるだろう。多くの事業が資格のない企業に経営され、行き詰まっているが、それらが別の企業によって異なった経営をされれば、業績は改善するかもしれないのだ。たとえば新日本製鉄が所有していたときには大幅な赤字を出していた半導体事業は、台湾の半導体メーカーに買収された後、業績は好転した。

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