「コミー証言」の証拠価値に疑問符がつく理由 ミュラー特別検察官のバランス判断がカギ

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ミュラー氏も、その「ロシアゲート」疑惑については、かなり前にさかのぼって調べ出している。目下、トランプ陣営の選対本部長だったポール・マナフォート氏を捜査ターゲットの中心に据えている。

マナフォート氏は、親ロシア派ウクライナのヴィクトル・ヤヌコヴィッチ元大統領のコンサルタントをしていた。そんな関係でウクライナ秘密口座から多額の資金を受け取っていた疑惑が浮上し、昨年8月、選対本部長を辞めさせられている。

新生「第2次トランプ・バノン政権」の始まり?

そのマナフォート氏のロシアコネクションを通じて、ミュラー氏は「ロシアゲート」疑惑を追及している。そこから何が飛び出してくるか。トランプ政権の動揺は、これからも収まりそうにない。

ただ、ここではっきりしてきたのは、「ロシアゲート」疑惑を契機に、トランプ政権が新たな段階に入ってきたことだ。それは、いわば新生「第2次トランプ・バノン政権」の始まりといっていい。

ホワイトハウス内の権力闘争で最初に脱落したのは、「ロシアゲート」絡みで失脚したフリン氏だった。その後、前面に出てきたのはクシュナー氏だったが、「ロシアゲート」疑惑を契機に後退、代わってスティーブン・バノン氏が再浮上してきた。

「ロシアゲート」疑惑に関連して、初めてクシュナー氏の名前が、米メディアに登場する以前に、バノン氏は「これでクシュナーも終わりだ」と軽口をたたいていたという。そのクシュナー氏と行動を共にしていたフリン氏はすでに政治生命を失った。

さらに、さかのぼれば、選挙戦中にマナフォート氏下ろしを強烈に画策、成功し、トランプ陣営の参謀トップに躍り出たのはバノン氏だった。皮肉にも、ロシア問題を切り抜け、尻ぬぐいし、何とか窮地をしのいできたのはバノン氏の存在あったればこそかもしれない。

これからミュラー氏の捜査の進展に伴い、バノン氏が盟友トランプ氏の救世主の役回りをどう演じるのか、見物である。

湯浅 卓 米国弁護士

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ゆあさ たかし / Takashi Yuasa

米国弁護士(ニューヨーク州、ワシントンD.C.)の資格を持つ。東大法学部卒業後、UCLA、コロンビア、ハーバードの各ロースクールに学ぶ。ロックフェラーセンターの三菱地所への売却案件(1989年)では、ロックフェラーグループのアドバイザーの中軸として活躍した。映画評論家、学術分野での寄付普及などでも活躍。桃山学院大学客員教授。

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