労働時間の削減で賃金が減っては意味がない 「働き方改革」の落とし穴に要注意

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非正規の社員ではもっと就業時間を増やしたいと考えている人が多い(写真:kou/PIXTA)

有効求人倍率が1.48倍とバブル期の水準まで高まり、失業率が完全雇用とされる3%程度を下回って2%台まで低下するなど、労働需給は極めて逼迫した状態が続いている。だが、賃金の伸びは相変わらず低いままだ。

厚生労働省の「毎月勤労統計調査」によれば、1人当たり賃金(現金給与総額)は2014年度に4年ぶりに上昇。その後、2016年度まで3年連続で上昇したものの、伸び率は2014年度が前年比0.5%、2015年度同0.2%、2016年度同0.4%とゼロ%台前半にとどまっている。

賃金総額の大部分を占める基本給(所定内給与)を就業形態別に見ると、正社員を中心とした一般労働者の所定内給与の伸びはゼロ%台半ば。春闘賃上げ率のベースアップが同程度にとどまっていたためだ。

一方、労働需給をより敏感に反映するパートタイム労働者の時給(時間当たり所定内給与)は一般労働者を大きく上回る伸びを続けており、2017年1~3月期には2%台まで上昇ペースが加速した。

パートタイム労働者の労働時間は減少

一般労働者(短時間労働者以外の労働者)の多くは月給制なので、賃金の基調的な動きを判断する際に1カ月の賃金総額(1人当たり)を見ることが一般的だ。

これに対し、パートタイム労働者の賃金は、まず時給(時間当たり賃金)が決まり、労働時間に応じて賃金が支払われる形だ。賃金上昇圧力を見るには、時間当たり賃金で把握することが適切である。しかし、言うまでもなく、パートタイム労働者が受け取る1人当たり賃金総額は、時給と労働時間によって決まる。

日本の労働時間は長期的に減少傾向が続いている。「毎月勤労統計調査」を用いて、労働者1人当たりの年間総労働時間を確認すると、1970年代から1980年代にかけて2000時間を大きく上回る水準で推移していたが、1980年代末から1990年代初めにかけて水準を大きく切り下げ、1990年代前半には2000時間を割り込んだ。

これは、改正労働基準法の施行によって法定労働時間が週48時間から40時間へと段階的に引き下げられ、週休2日制が定着してきた影響が大きい。年間総労働時間はその後も減少を続け、1990年代後半には1800時間台、2000年代後半以降は1700時間台となっている。

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