夜の山道30kmに挑む「名門男子校」の独特授業 東京・巣鴨は「大菩薩峠越え」で生徒を育てる

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ゴールの塩山北中学校の校庭には記録係が待ち受けている。そこで各自カードを提出し、タイムを記録してもらう。

私がゴールしたのは10時30分。ちょうど7時間30分の山歩きだった。中2の生徒約250人中170位くらいのタイムらしい。キーボードを打つのが仕事である運動不足の四十路にしてはまずまずではないか。「オレもまだまだやればできる」。そんな高揚感があった。

どんなに遠い道のりも必ず踏破できる

閉会式、全校生徒約1500人を前にして、堀内不二夫校長が言う。

「よくやった。みんなに伝えたいのはその一言。見てごらん、あそこに山頂が見えるよね。君たちは山の向こう側からあそこまで登って、一歩一歩、ここまで歩いてきたんです。こんな気の遠くなるような道のりも、一歩一歩を重ねることで踏破できるんだ。君たちは今日、そのことを実感しただろう」

まるで自分に語りかけてもらっているような気がした。

「今回53回目となるこの強歩大会ですが、毎年たくさんの卒業生、バス会社の皆さん、塩山北中学校など、大勢の方のご協力があってこそ成り立っていることを忘れないでください。みんなでお礼を言いましょう。ありがとうございました! さて、みんなも疲れているだろうから、話はこの辺にしましょう。最後に、みんな、あれ、やりたいだろう? みんなで万歳をやろうじゃないか! 思い切り万歳をやっていいけど、言っておくが、帽子は投げるなよ。いいな……」

閉会式の万歳三唱がこれまた「お約束」なのだ。

「いくぞ! ばんざーい、ばんざーい、ばんざーい!」

帽子が飛んだ。

ゴールまであと少し…(写真:筆者提供)
おおたとしまさ 教育ジャーナリスト

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Toshimasa Ota

「子どもが“パパ〜!”っていつでも抱きついてくれる期間なんてほんの数年。今、子どもと一緒にいられなかったら一生後悔する」と株式会社リクルートを脱サラ。育児・教育をテーマに執筆・講演活動を行う。著書は『名門校とは何か?』『ルポ 塾歴社会』など80冊以上。著書一覧はこちら

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