VISA、目立たぬ「金融の巨人」知られざる正体 本質は金融というよりテクノロジーにある

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ちなみに時価総額は、ざっくりといえば利益規模と将来の成長性を掛け合わせた側面で評価されることが多い。したがって、現在の利益規模が小さくとも将来に収益が成長すると期待されれば時価総額は大きくなり、現在の利益規模が大きくとも将来性がないと判断されれば小さくなる。

VISAとはいったい、何者なのか?

では、なぜVISAは株式市場でそこまで高く評価されているのだろうか。その一端がわかるデータを紹介したい。

VISAの支払総額を見ると6兆8430億ドル(約760兆円)ある。VISAのほかのマスターカード、アメリカン・エキスプレス、ディスカバー/ダイナース・クラブ、JCBといった「国際ブランド」と呼ばれるカードの中でのシェアは実に約60%にも及んでいる。日本を代表する国際ブランドであるJCBとの比較でいえば、VISAはJCBの約34倍だ。

「VISA」マークはクレジットカードやプリペイドカード、デビットカードについている金融機関を表しているとお考えの方もいるかもしれないが、実際は異なる。VISAは消費者に信用を供与しているわけではなく、また金融商品を直接販売しているわけでもなく、銀行でもなく、証券会社でもない。

また、VISA自身は実は1枚もクレジットカードを発行していない。正確に言えば、金融機関が「VISAの決済インフラ」を活用しているという形なのだ。VISAやマスターカード、アメリカン・エキスプレス、ディスカバー/ダイナース・クラブ、日本のJCBなど国際ブランドと呼ばれるのは、決済インフラを提供する企業であるが、JCBやアメリカン・エキスプレスなどは国際ブランドでありながらクレジットカードを発行している(イシュアと呼ばれる)。

こうしたVISAは自分たちのことを次のように表現している。

“At its heart, Visa is a technology company.(本質的にはVISAはテクノロジーの会社である)”

VISAのこれまでのビジネスモデルを見れば、フィンテックという言葉が流行するはるか前から、決済の分野でテクノロジーを活用してきた会社といえる。

決済方式は国や地域で異なる。たとえば日本では、以前から現金決済が好まれてきたこともあって電子マネーが普及した。一方で海外では、小切手を使用する習慣からデビットカードが普及したといわれる。このように、テクノロジーを活用するにしても、意外に「地域性」を無視することはできない。また、決済をするにしても、通信の環境・インフラも世界一様ではないのだ。

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