日本男児よ、「昭和の経営者」の心意気を学べ 「信長の棺」の人気作家が現代の経営者に提言

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貨幣や穀物のように、人間の生き死にが懸かっているようなものを扱うときには、規制があってしかるべきだと思うんです。それなのに、現実にはそうなっていない。

資本主義の暴走を食い止めるには「謙虚さ」が必要

社会主義が退潮して、世界的に、今の資本主義は自主抑制力を失っているんです。やっぱり、資本主義には謙虚な部分がなければ危険ですよ。僕は学生時代から社会主義の信奉者ではないし、資本主義であることは仕方がないという意見だけれど、そう思います。

日本企業の場合、経営者が日本人らしい心を見失うとともに、資本主義の謙虚さもなくしている。それで、行き過ぎがあちこちで起こっているのだと思いますね。

――資本主義の限界が見えつつある今こそ、昭和の経営にあった「心」を取り戻すべきなのかもしれません。では、最後に、この本で先生が最も伝えたいことをお聞かせください。

いちばん言いたいのは、「人生の中に仕事を入れるのはいいけれど、仕事の中に人生を入れるな」ということですね。人生の一部に仕事が入るのは仕方がないでしょう。けれど、仕事の一部に人生が入ってはいけない。つまり、仕事よりも人生のほうを大事にしてほしいということです。

人生よりも大事な仕事なんて、そうそうあるものではない。たとえばエイズの特効薬をつくるとか、がんをなくす薬をつくるとか、人類を救うような仕事ならば別ですけれど、そんな仕事はめったにありませんよ。

われわれが普通にやる仕事は、どれも人生ほど大事なわけではないということを、忘れないようにしたほうがいい。つい、忘れちゃいますからね、仕事が面白すぎて。

資本主義が抑制を失っている時代ですし、仕事に皆さんの人生を振り回されすぎないようにしていただきたいものです。

加藤 廣 小説家

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かとう ひろし / Hiroshi Kato

昭和5年(1930)東京生まれ。東京大学法学部卒業。中小企業金融公庫に入庫し、貸付・審査関係を経て山形支店長、京都支店長、調査部長などを歴任。51歳で退職後、山一證券経済研究所顧問、埼玉大学経済学部講師などを務める。経営コンサルタントとして中小企業の育成にも奔走.

平成17年(2005)に作家デビュー。デビュー作となる小説『信長の棺』は、当時の小泉純一郎総理が愛読書として挙げたこともあり大ベストセラーに。『秀吉の枷』『明智左馬助の恋』と合わせた本能寺三部作は、合計200万部を超す名作として多くの読者の支持を受けている。

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