中国が消えた「アジア安全保障会議」の舞台裏 どうして中国は大物を送らなかったのか

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中国側は理由の一つに軍改革が進行中であることを挙げたという。実際に、中国では継続的に軍改革が行われており、今年に入ってから人事の調整が集中するようになってきている。もう一つの理由は秋の党大会を控えているから、とのこと。IISS側によると、来年の会議では「主催者側が満足するような」、地位の高い人物を送ることが中国側から約束されたそうだ。

今年の会議の内容を見ても、中国側の対応が昨年よりかなりソフトになったように感じた。アメリカ側登壇者への挑戦的な質問はなかったし、筆者が参加した過去2回の会議で見かけたような中国代表による激しい演説とは様変わりし、位が低かったため演説自体がなかった。

中国代表が記者ブリーフィングも

また、かつては記者から逃げるように会場を去っていた中国側の代表が、今回は国内外記者が大勢参加する形でブリーフィングを行った。その中で、マティス長官の台湾への言及には異議を唱えたものの、全体として発言は非常に抑制されていた。位が低いせいもあるのか、今回は気軽に個別取材にも応じていた。

対話のテーマが中国の出方を微妙に変えさせたという見方もある。落ち着きを取り戻してきた南シナ海問題で中国が波風を立てたくないと考えても不思議はない。2016年7月末に中国に不利な仲裁判決が出て以降、中比関係はドゥテルテ大統領の登場で改善し、5月17〜18日に貴陽市で行われた中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)の高官協議では、南シナ海行動規範(COC)の枠組みで合意を見た。

北朝鮮については、4月の米中首脳会談で両国の合間が近づきはじめ、中国側はアメリカとの協力姿勢を演出したかったように思える。

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