デフレ脱却へ前進も、根強い「増税慎重論」 増税見送りのリスクは大きい

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デフレ脱却へ近づく。増税見送りならリスク大

一方、政府内には、 ここで増税を白紙に戻せば、かえって金融市場の不興を買いかねないとの不安もあるようだ。今回のGDPはデフレ脱却に向けた好材料が並んでおり、データ的に見れば消費増税を予定通り実施するうえで追い風が吹いている、との判断もできる。

確かに、政府がデフレ脱却の判断材料のひとつとするGDPデフレーターは前期比で、3四半期ぶりに上昇。GDPデフレーターのプラス転換について、内閣府幹部は詳細を分析する必要があるが「デフレ脱却に向け、重要な一歩となる可能性がある」と評価した。

また需要と供給のGDPギャップも、4─6月期の成長を受けてマイナス1%台後半程度に縮小したと見られている。民間調査機関では来年年明けには需要超過のプラス領域に入ると見ている。

政府が配慮する所得環境も好転が見られた。名目雇用者報酬の伸び率は前年比でプラス1.0%とリーマンショック前の08年1─3月期(同1.5%)以来の高い伸び。雇用者数の増加が寄与した。

こうした環境下で、仮に予定通りの3%の増税を実施しないと、金融市場にくすぶる様々なリスクが表面化する懸念がある。ロイターが行った金融市場関係者への聞き取り調査では、4─6月GDP成長率がたとえ2%台以下にとどまっても予定通り増税を断行すべきとの見方が圧倒的に多数を占めた。予定通り3%の増税を実施しない場合、国際的な信任を失うほか、各国の円安容認が崩れるとともに、日銀が強力な国債買い入れを維持する正当性が損なわれる、との懸念が背景にある。

また「経済統計の数字とは別に、現在の消費増税実施案に反対する有権者が世論調査で増えていることも、(政府にとって)けっして見逃せない重要な要素である」(みずほ証券)との指摘もある。

安倍首相はこうしたリスクや膨れ上がる公的債務の現状をにらみつつ、難しい判断を迫られることになりそうだ。最終判断は、8月下旬から、専門家・有識者などから幅広く意見を聞き、増税幅や影響緩和の景気対策などが検討されると見られる。4─6月期GDP2次速報をみて9月下旬から10月上旬ごろに安倍首相が最終判断する見通しだ。

(ロイターニュース 中川泉 吉川裕子 編集 北松克朗)

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