大阪市「地下鉄民営化」後の険しい道のり 値下げや関連事業、市の予測は実現できるか

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給与の減少に伴い、人件費を構成する法定福利費なども減るので人件費を圧縮可能だ。人件費と給与総額との比率で人件費を求めてみると449億円となり、大阪市交通局の509億円と比べて60億円少なくなった。

とはいうものの、大阪市が見込んでいる人件費の削減額は大きく、60億円減らしてもまだ2018年度の見通しと同程度でしかない。ましてや、大阪市は初乗り運賃の次の2区運賃を現行の240円から230円へと値下げするとまで言っている。2022年度のマイナス99億円や2027年度のマイナス173億円という金額をクリアするためには職員数を半分に減らしたり、給与をそれこそ南海電気鉄道と同じ水準まで下げたりといった徹底的なリストラしか選択肢はない。

仮にそのようになったとして、高速鉄道事業会社は鉄道事業を続けていけるのであろうか。

法人税はいくら納めることになる?

最後は法人税等を見ていきたい。公営鉄道の大阪市交通局は租税公課とともに法人税も納めていない。だが、民営化で新たに納税の義務が生じ、法人税等は2018年度で80億円、2022年度で91億円、2027年度で114億円と大阪市は予測している。

法人税はそのときどきの経営状況に左右されるので、大阪市が見込んだ納税額が妥当かどうかの判断は難しい。いっぽう、東京地下鉄は2014年度に294億円を納めた。詳しく見ると、同社の税引前損益は792億円であり、30.6パーセントが法人税に充当されている。

JR各社や大手民鉄各社の納税状況をまとめてみた。税引前損益に対する法人税の割合は案外ばらつきがあり、大手民鉄の26.2パーセントあたりで算出すればよいだろう。となると、税引前利益から、高速鉄道事業会社の法人税等は2018年度が68億円、2022年度が78億円、2027年度が97億円と大阪市の予測よりも多少圧縮できた。

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