大阪市「地下鉄民営化」後の険しい道のり 値下げや関連事業、市の予測は実現できるか

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2002年度と2003年度とで損益計算書を比較すると、2002年度に生じた3438億円余りの当期未処分損失は任意積立金に繰り入れられており、2003年度に前期繰越損失として扱われるべきところ、損益計算書上の前期繰越損失は1689億円と1749億円も減った。順当に考えればこの1749億円は大阪市の一般会計で処理されたと考えられる。

したがって、大阪市は交通局の事業を民営化したうえで、なおかつ株式を公開して売却益を獲得しないと割に合わない。

JR九州が2016年10月25日に株式を公開したときの時価総額は4600億円であった。大阪市交通局の高速鉄道事業が株式の公開を果たした場合、時価総額はJR九州と同等となる可能性もある。そうなれば、大阪市が累積欠損金の解消に努めたかいもあったというものだ。

関連事業で旅客減を補えるか

民営化後の高速鉄道事業会社の収支はどのようになるのであろうか。2014年度の実績、そして「地下鉄事業株式会社化(民営化)プラン(案)」に記されている2018年度(民営化1年目)、2022年度(同5年目)、2027(同10年目)の数値を基にまとめてみた。ここでは鉄軌道業営業収益、同営業費、法人税等の3項目を見ていきたい。

営業収益のうち旅客運輸収入は、少子高齢化の進展による人口の減少で輸送人員もまた減ると大阪市は予測しており、2014年度比で2018年度はマイナス1億円、2022年度はマイナス51億円、2027年度はマイナス92億円となるという。

いっぽうで、営業収益そのものの減り具合が少なく済んでいるのは関連事業に力を入れるからと説明されている。具体的にはホテル・不動産事業、高齢者・子育て支援事業などを新たに展開するとのことで、駅構内や電車内での広告事業、駅構内での店舗事業といった既存の事業に加え、2018年度は2014年度と比べて28億円、2022年度は59億円、2027年度は66億円の増収を見込む。

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