日経平均2万円でもNYダウに不吉なサイン 不気味な「ヒンデンブルグ・オーメン」が点灯

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ヒンデンブルグ・オーメンの発生条件については諸説ある。一般的には、同日に下記の3項目が起こった際に「サインが点灯」と言われている。

(1)NYダウの値が50営業日前の値を上回っている状態(10週移動平均線を用いる説もある)

(2)NY証券取引所(NYSE)での52週高値更新銘柄と52週安値更新銘柄の数がともにその日の値上がり・値下がり銘柄合計数の2.2%以上となる(つまり専門用語で言えば新高値・新安値比率が2.2%以上。2.8%以上との説もある)

(3)短期的な騰勢を示す指標である「マクレラン・オシレーター」(McClellan Oscillator、オシレーターは「振り子」の意味)の値がマイナス

※上記の3つのほかにも「52週高値更新銘柄数が52週安値更新銘柄数の2倍を超えない」という項目が加わることもある

このように、発生条件に諸説あるところが、このテクニカル分析の不可思議なところであり魅力でもあるのかもしれない。対象がNYダウ限定であることや、都市伝説のようなネーミングに惹かれる業界関係者もいることだろう。

2015年6月に点灯した時は、同8月にNYダウが暴落した

それはさておき、ヒンデンブルグ・オーメンのサインが出たのは2015年6月中旬以来である。このときは、同8月の中国株大暴落を受けて、NYダウは1万8000ドル台から1万5000ドル台まで下落した。同6月から8月ということでいくと、約2カ月で約15%の下落だったが、同8月19日の1万7517.19ドル(高値)から同24日(安値)1万5370.33ドルと、この間わずか4営業日で2000ドル強下落していることから、重大なクラッシュととらえてもいい下落だったといえよう。

今回のサイン点灯を受けて、市場関係者の一部はNYダウ急落を警戒して身構えるかもしれない。2015年夏の下落を参考にすると2カ月間で15%の下落、即ち3000ドルほどの下げとなるのだろうか。

もし2万1000ドル水準から、今回も3000ドル程度下落すると1万8000ドル前後となる。昨年11月上旬以来の水準となる。お気づきの方も多いだろうが、1万8000ドルとは、トランプ大統領が大統領選挙で勝利する前の水準とほぼ同じだ。足元のトランプ政権は「ロシアゲート」で揺れている。NYダウは5月17日に370ドルほど下落したものの、6月1日に終値で史上最高値2万1144ドルをつけた。今回のヒンデンブルグ・オーメンのサイン点灯が、何を材料としているのかはわからない。このタイミングでのサイン点灯は「ロシアゲート」に伴う下げを示唆しているのか。それとも何か別の出来事が起きるのか。何も起きないのか。頭の片隅に置いておきたい。

田代 昌之 マーケットアナリスト

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たしろ まさゆき / Masayuki Tashiro

北海道出身。中央大学文学部史学科日本史学科卒業。新光証券(現みずほ証券)、シティバンクなどを経てフィスコに入社。先物・オプション、現物株、全体相場や指数の動向を分析し、クイック、ブルームバーグなど各ベンダーへの情報提供のほか、YAHOOファイナンスなどへのコメント提供を経験。経済誌への寄稿も多数。好きな言葉は「政策と需給」。ボラティリティに関する論文でIFTA国際検定テクニカルアナリスト3次資格(MFTA)を取得。2018年にコンプライアンス部長に就任。フィスコグループで仮想通貨事業を手掛ける株式会社フィスコデジタルアセットグループの取締役も務める。

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