原油高が家計を直撃 視界不良の海外旅行、国内は安近短へ回帰

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 節約志向は予約状況にも表れている。通常、海外旅行の予約は、民間企業のボーナスが出そろう6月第4週から本格化するが、「今年はピークが1週間から10日、後ろにずれている」(JTB首都圏の皆見薫常務取締役)。消費者は旅行にいくら使えるのか、慎重に見極めている。

このため、海外旅行から国内へのシフトも顕著で、「国内旅行が前年を上回るのは間違いない」(同)。ただし、国内に目を転じても消費者の節約志向は依然として根強い。

今夏、JTBの人気商品となっているのが「ドラ旅」シリーズ。高速道路会社のETC割引とJTBの旅行商品
を組み合わせた商品だ。通常の高速料金より割安になるうえ、周遊エリアでは乗り降り自由など特典が多い。特にガソリン1000円券付き商品の人気が高い。

アクセスが便利な首都圏の近場スポットも人気だ。開業25周年を迎えた東京ディズニーリゾートは「独り勝ちの様相」(関係者)。7月に開業した三つ目の直営ホテル「東京ディズニーランドホテル」は、夏休み期間中すでに予約はいっぱい。都内のプールも好調で、としまえん(東京都練馬区)は7月19~21日の入場客数が前年同期比で約2割増だった。国内でも今年は“安・近・短”の傾向へ流れている。

予約の“間際化”の影響もあり、一部の大手旅行会社では7月に入り海外旅行に回復の兆しも出ている。HISでは7月中旬までの「サマーセール」期間中、予約件数が2割も伸びた。ただ、これは低価格の仕入れを強化した結果。今後は、旅行会社の体力によって格差が広がる可能性も考えられる。

航空券発券の手数料見直しも痛手

今夏以降も、海外旅行は視界不良だ。燃油サーチャージはさらに上昇し、10月以降は現在5・6万円の米国・欧州往復が8万円になるとの指摘もある。若者旅行者の減少などで、昨年から海外出国者数はマイナスに転じている。サーチャージ上昇が需要を一段と冷やすおそれがある。

さらに旅行会社にとって気掛かりなのは、航空会社から支払われる販売手数料の見直しだ。すでに昨年4月、日航と全日本空輸が運賃の7%相当から5%に引き下げを実施。今年10月には、成田空港で日系2社に次ぐ路線網を持つ米ノースウエスト航空が、手数料を廃止する方針を打ち出している。欧米では手数料の見直しが旅行会社の再編に直結した経緯がある。旅行会社には手数料に代わる収益源の確保が迫られている。

前門の需要減退に、後門の手数料見直し。今後、業界再編が加速する可能性は十分に考えられる。

(並木厚憲 撮影:鈴木紳平 =週刊東洋経済)

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