個別指導塾が投資ファンドに身売りしたワケ スクールIE、ファンドと組んで上場を目指す

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とりわけ束原氏の心を掴んだのは、松田社長の「神様がくれた宝石」の話だった。もともと「一人ひとりの子どもが持つ潜在的な力に気づくことは重要」と束原氏は考えており、宝石にちなんだ名前を娘につけたほどだ。

「松田社長はこの理念を一貫して、組織に浸透させてきた。しかも、展開している領域は(個別指導塾や幼児教育など)すべて成長分野だ」(束原氏)。

長時間労働という構造問題

「今後も社長として続投する」と語る松田氏(撮影:今井康一)

松田社長は今回の買収について「少しは悩んだ」とも明かす。「『ワンマンのままの方がよかったかな』と。でも、自分のメッセージをより多くの人に伝えるため、(具体的には未定だが)将来的には株式公開を意識している。会社を公的なものにするならば、世の中の信頼を得ていかないと」(松田氏)。

松田社長が「世の中の信頼」と語る、その背景にあるのは、近年大きな話題となった教育業界の「働き方」の問題だ。

2015年には明光義塾で学生アルバイト講師に対し、授業以外の業務時間の管理や賃金の支払いが適性になされていないことが判明。「ブラックバイト」が話題となった。教育や保育の現場では「子どものため」という奉仕の色が強くなり、どうしても教師や保育士が不規則・長時間労働に陥りやすい構造がある。

スクールIEの講師も学生やシニアなどのアルバイトが中心。これまでも「長時間労働は禁止してきた」(松田社長)というものの、「今後も世の中が求める働き方の基準に合わせていかないと、リスクが大きくなってしまう。ここはアドバンテッジパートナーズが培ってきた(人事・労務マネジメントの)経験を活かしてもらいたい」(同)。

「アルバイト講師も、理念に共感してくれると力の出し方が変わってくる。(労働時間・賃金などの)基準を守った上で、『ここで働くのが面白い』と思ってもらえるかどうかが、会社を成長させるためにとても重要な部分になる。講師に対しても、教育の理念をしっかりアピールしていく」と松田社長は話す。

「第2創業」を前に、やる気スイッチグループは大きな変革の時を迎えている。

平松 さわみ 東洋経済 記者

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ひらまつ さわみ / Sawami Hiramatsu

週刊東洋経済編集部、市場経済部記者を経て、企業情報部記者

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