港区より足立区に出店したほうが儲かる理由 立地戦略の敵は現実とずれた「イメージ」だ

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まず、交差点に信号がある場合、信号の手前にあるよりも、信号の先にお店があったほうがいいとされています。なぜか。手前でも奥でも自動車での入りやすさ・入りにくさはあまり変わらないと思われるかもしれませんが、出るときを想像してみてください。お店の駐車場から道路に出るときには、信号の奥のほうが出やすいですね。

信号待ちで車が連なって止まっていると、手前のAやEのお店からは出られません。列が途切れたときか、列のどこかに割り込まなければいけないからです。信号が青になり、車の列が動き出したらタイミングを見計らってようやく道に出られます。よって、交差点手前のAとEは候補ではなくなります。

これが信号より先のBの場所であれば、渋滞していないかぎり、信号が赤になっている間に道路に出ることができます。交差点から曲がってくるような車がなければ、スムーズに出られるでしょう。道路に出るための障害が交差点手前よりずっと少ないのです。

ドライバーは、車を運転している最中は視野がギューッと狭まるといわれています。周りの景色をよく見ているというより、前の車や信号、横を走るバイクなどに注意を向けています。これが、信号で止まった瞬間にポンと視野が開けてリラックスできます。信号で止まると一瞬ホッとする感覚を覚えることがありませんか? まさにそのときに、狭まっていた視野が開けて、「あ、信号の先にコンビニがあるな」と認識できるのです。

FよりもBのほうがいい理由

では、なぜFよりもBのほうがいいのでしょうか。2つの立地の違いは、Bが交差点の「角地」にあるという点です。角地というのは、2本の道路に面している場所のこと。この図では、5000台が走る道と2000台が走る道です。そうなると、Bは両方の道からお客様を集めることができるので、合計して7000台の交通量を持つ立地、ということになります。Fは5000台が走る道にしか面していません。よって、より交通量の多いBがベストの立地、となるわけです。

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ちなみに、立地にかかわる業界では、Aの立地を「送り角(かど) 」、Bの立地を「受け角 」といいます。ロードサイドに出店するならば、2つの道に面する交差点の角地の「受け角」を狙うことです。セブン-イレブンは、確実にこの立地に出店しています。もし「送り角」にセブン-イレブンがあったら、私は「あぁ、今は『受け角』の土地を狙ってまずは『送り角』に出店し、『受け角』側と交渉している最中なんだなぁ」と思うくらい、徹底しています。それだけ、ロードサイドのベストな立地は受け角、と決まっているのです。

なんとなくのイメージで決め付けていた街の特徴や、なんとも思っていなかった店舗の場所も、ちょっと視点を変えれば今までと違ったように見えてくるはずです。

榎本 篤史 ディー・アイ・コンサルタンツ社長

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えのもと あつし / Atsushi Enomoto

2003年ディー・アイ・コンサルタンツ入社。小売業、外食、サービス業、生活関連サービス・娯楽業など、流通全般の成長支援プロジェクトに参画。クライアント企業との協働作業により、戦略の立案および実行を支援。クライアント企業との長期的な信頼関係の構築を重視している。2014年より現職。

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