セーラームーン愛すオトナ女子の覚めない夢 伊勢丹のブランドなどと25周年コラボ続々

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方向性を見れば、誰をターゲットとしているのかは一目瞭然だ。アニメ放映時に女の子だった層、すなわち20代後半~30代女性である。そのことはコラボグッズに使用される絵柄からもわかる。セーラームーンは2014~2016年の間に「セーラームーンCrystal」として再アニメ化しているが、コラボグッズの宣伝、およびデザインに使われるイラストの多くが旧版、つまり1990年代に放映されていたアニメのイラスト、もしくは原作コミックのイラストなのだ。

実際、筆者もセーラームーンを見て育った1人だが、セーラームーンといえば1990年代のアニメの絵柄を思い出す。つまり、あくまでも「1990年代に少女だった層」に的を絞ってコラボレーションが行われている。

当時放映されていた女児向けアニメはセーラームーンだけではない。また、いわゆる「魔法少女系」のアニメならば「ミンキーモモ」や「クリィミーマミ」「ひみつのアッコちゃん」など他にも名作がひしめいている。ただ、セーラームーンがそれまでの女児向けアニメと明らかに異なっていた点が2つある。「スタイリッシュなデザイン」と「女の子が世界を救うために戦う物語」だ。

セーラームーンが起こした「2つの革命」

それまでの女児向けアニメは基本的に「かわいらしい」デザインが多かった。クリィミーマミやミンキーモモ、ひみつのアッコちゃんのキャラクターデザインは全体的に丸みを帯びていたし、衣装もふわふわで、パステルカラーや暖色系を中心としていた。

それに対し、セーラームーンのデザインは全体的にシャープだ。モチーフであるセーラー服は原色に近い色合い、襟はとがっているし、スカートにも角がある。プリンセスの衣装もそれまでの女児向けアニメのドレスとは明らかに異なる、体のラインに沿ったデザインだ。頭身も全体的に高く、メインキャラは中学生・高校生なのにヒールの靴を履いている。バレエのチュチュを思わせる短いスカートをひるがえし、すらりとした姿で美しく立ち回る姿は「かっこいい」というイメージを抱かせるのに十分だった。

そして、決定的なのが「女の子が世界を救うために戦う」という物語だ。もちろん、それまでのアニメにも戦う女性はいた。しかしあくまでも主体は男性であり、女性キャラは守られる側、愛される側に置かれることが圧倒的に多かったのだ。

セーラームーンはその前提をひっくり返した。戦うのはあくまでも女の子が変身するセーラー戦士で、男性キャラはサポートに徹する。それどころか、主人公をかばって瀕死の状態になったり、敵のボスにさらわれたりと、ヒロインの役目を主人公の彼氏が引き受けていたのだ。

アニメの内容も意外にハードで、流血描写こそないものの、痛めつけられるシーンも多く、仲間の死亡展開もあった。

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