セミナーレポート

実践者が語る、失敗の本質と成功の条件

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一人当たりGDPが、先進国中、最低レベルに落ち込んだ日本の生産性をめぐる課題を考える「超・生産性会議」が4月25日に東京・港区で開かれた。開会で、東洋経済新報社の鈴木雅幸・編集局長は「人口が減少する日本において、生産性は、働き方、地方創生などの問題に対処するカギ。議論が、日本経済の将来不安を払拭する一助になれば」とあいさつした。
主催:東洋経済新報社 メインスポンサー:Sansan
後援:エリア・イノベーション・アライアンス 公民連携事業機構

ビデオメッセージ
来賓挨拶

菅義偉・内閣官房長官は「生産性向上の中核になるのは、第四次産業革命と働き方改革」と指摘。データと社会の現場をつないで、自動走行、医療介護などの分野で革新的製品・サービスが生まれており「政府も第四次産業革命をしっかり後押しする」と述べた。一億総活躍社会のカギ、働き方改革は、労働生産性向上が不可欠としたうえで、会議が「これからの日本に大きなヒントを与えてくれることを期待します」と語った。

特別リレートーク&LIVEディスカッション
「なぜ、日本の生産性はこれほどまでに低いのか?」

小西美術工藝社
代表取締役社長
デービッド・アトキンソン氏

不良債権問題の深刻さをいち早く予見するなど金融アナリストとして活躍した小西美術工藝社のデービッド・アトキンソン氏は、国の生産性の指標となる一人当たりGDPで、日本は1990年の世界10位から2016年は30位になったことを示した。労働人口一人当たりでは先進国最下位で「世界3位の経済大国の中身が30位になっていることに気付いていない。客観的データを検証すべき」と訴えた。90年以降の日本の株価上昇率は、アフガニスタン、シリアに次ぎ世界で下から3番目と低迷。労働者の質は高レベルだが、人口急増に支えられた高度成長期の日本型経営を妄信する経営が、それを生かせていない。

さらに、低生産性の仕組みを守るために、女性、シニアに加え、安価な労働力として外国人も入れようとしていると指摘。「生産性を上げて、子どもの貧困改善、社会保障の維持を考えるべき。やるかやらないかの問題です」と迫った。

キャリア形成コンサルタント
伊賀 泰代

キャリア形成コンサルタントの伊賀泰代氏は、「日米の生産性の差は、社員がどれだけきびきび働いているか、という違いではない。違いはビジネス設計上のマネジメントにこそある」と強調。日本企業は今でも、プラザ合意以前の安く見積もられた労働力を前提に、多大な人力を投入し、利益がわずかでも事業を継続しようとするため、あらゆる分野で過当競争が起きている。しかし、経営の使命は、株主、社会から預かった資金・人材から最大の利益を上げることにあるとし、事業の取捨選択を求めた。ホワイトカラーも、投入時間に見合う成果が求められているという視点に欠ける。

企画・管理部門は、社内向け資料の見栄えを改善するためだけに残業し、営業部門は、わずかな利益の契約を取るために休日出勤までする。そうした仕事のやり方に疑問を呈する一方、「人手不足が限界を迎えた今のタイミングは、生産性を上げる大きなチャンス」と期待を示した。

エリア・イノベーション・アライアンス
代表理事
木下 斉

地域の経済再生に取り組んでいるエリア・イノベーション・アライアンスの木下斉氏は「地域経済の衰退は、政府の補助金をもらうことが最大のインセンティブになっているから」と断じた。公共投資も民間と大きな違いはなく、道路は、地価上昇、住宅や事業所の建設で、税収を増やすことを目指すのが都市計画の基本だが、稼ぐためではなく、予算を獲得するための計画では、目標を達成できない。さらに、赤字になっても、表に出さずに自分の任期を乗り切ろうとする傾向にも言及。借金を埋め合わせることが前提では、生産性を上げる努力をせず、経済的な成果目標はあいまいなものに置き換えられる。そして、生産性の低い事業に国や地方の税金をつぎ込んでも、一部の人が少し潤うだけで財政は悪化する、という構図を示した。最近は、自治体が財政難で、採算度外視を見直し始めたとして「地方が生産性に向き合うことが日本全体の発展に重要」と語った。

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