日本はいまロシアと組む絶好のチャンスだ 鈴木宗男×中村繁夫が日ロ関係の未来を語る

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中村:今回のモスクワの日ロ首脳会談で決まった経済協力は、主に三井物産など大企業の案件でした。石油や天然ガスなど、エネルギー分野に限られがちだった従来の関係からは、一歩踏み出した形にはなりましたが、大企業の取り組みは、一定程度インフラが整えば活躍できると思います。これはどこの国でも同じです。

ただ、日ロの二国間のビジネスで言えば、本当に両国のビジネスが発展するには、「民間活力を活かす仕組みづくり」がまだまだ圧倒的に足りません。確かに国際協力銀行の融資制度は整いつつあります。中小企業も利用が可能だとのことですが、日本の大企業は日本政府に支えられてリスク回避が可能でも、日本政府は、中小企業に冷たいように思うのは私だけではないと思います。

本当に日ロ貿易を発展させたいなら、中小企業の進出が不可欠だと思います。それには、たとえば日本貿易保険(NEXI)の貿易保険の活用も必要でしょうし、より広範な開発のための「枠組み」を考えるべきです。民間企業のリスク回避の仕組みをできるだけ構築することが、日ロの経済協力を成功させるためには必須だと思うからです。

正直なところ、モスクワなどの「欧州に近いロシアの大都市」では、「結局はドイツ企業と組んだほうが楽」かもしれません。しかし、こと極東では、日本人に対する期待はとても高いのです。

にもかかわらず、日ロ両国間は冬の時代が長かっただけに、真剣にロシアビジネスで一旗揚げてやろうというビジネスマンは、いまは淘汰されてしまいました。うまくいかなければいかないなりに対処法がわかってくるのですが、ことロシアにはビビり過ぎている日本人が多い。「ロシア好きの日本人」をもっと育成するのもこれからの課題と言えそうです。

私も鈴木さんも、同じ目的のために日ロ関係を推進させていきたいと熱望しています。つまり、それは単に北方領土を共同開発するだけではなく、新規事業を開発するだけでもなく、最終的には日ロ貿易を推進して、両国の関係を発展させてくれる人材を残すということです。その結果として北方領土問題は自然に解決すると確信しています。

ロシア人は、日本人が本当に大好き

鈴木:ロシア人は、日本人が本当に大好きなんです。一方で、ロシア人にホンネを聞くと「中国人はあまり好きじゃない」という人も多い。理由は、互いにビジネスをすることになっても、結局は中国人の親戚や知り合いを連れてきて、自分たちで固まってしまい、地元の雇用などには必ずしも役に立たないからです。また日本には多くの大企業の優良ブランドがありますが、中国は少ない。日本はいまロシアと組む絶好のチャンスなのです。

福井 純 東洋経済 記者

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ふくい じゅん / Jun Fukui

「会社四季報オンライン」編集部長。『週刊東洋経済』編集部、『会社四季報プロ500』『株式ウイークリー』『オール投資』編集長、「東洋経済オンライン」編集部長、証券部長を経て現職。国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)、日本テクニカルアナリスト協会理事

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