「加計学園疑惑」をめぐる闇仕合は異様すぎる 真摯な国会審議なく、あざとい情報戦ばかり

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5月30日参院法務委員会で「加計学園疑惑」に関する民進党議員の質問を聞く安倍首相(写真:共同)

"1強"の安倍晋三首相を巻き込んだ「加計学園疑惑」が終盤国会での与野党攻防の最大の火種となっている。前半国会で安倍政権を揺るがせた「森友学園疑惑」と同様に、真偽不明の怪情報が飛び交う永田町特有の"闇試合"だが、今回の展開には異様さが際立つ。

「旗振り」と「批判」が入り乱れるメディアの報道ぶりが混乱を増幅させ、著名コメンテーターのスキャンダルまで絡めた情報戦はあざとさばかりが目立つ。通常国会会期末まで半月余り。多くの国民が不安視する「共謀罪」の国会審議が大詰めを迎える中、国民不在の与野党泥仕合の行き着く先が国民の政治不信拡大では余りにも救いがない。

事の発端は学校法人加計学園が運営する岡山理科大学の獣医学部を愛媛県今治市に作ることが今年1月、認められたことだ。来年4月の開学が予定され、実現すれば52年ぶりの獣医学部の新設となる。安倍政権が積極的に進める「大胆な規制緩和」を具体化する国家戦略特区の活用で、首相らは「岩盤に穴をあけた」と胸を張る。ただ、事業案が提起された昨年夏からわずか半年という「これまで例のないスピード」(文科省幹部)で学部新設が認められたことに加え、同学園理事長が首相の「腹心の友」だったことが「森友とそっくりの構図」(民進党)との疑惑を生み、野党の政権追及材料となっている。

菅官房長官と前川前文科省事務次官の舌戦

この疑惑は1月の通常国会召集時から関係者の間で話題となり、森友問題の表面化と合わせて一部メディアが報じたが、「二番煎じの印象が拭えない」(自民国対)こともあり、熾火のようにくすぶり続けていたのが実態だ。この状況を一変させたのが5月17日の朝日新聞朝刊1面トップの「"総理の意向”を示した内部文書の存在」という特ダネ記事と、その1週間後の前川喜平前文科省事務次官の「文書はあった。なかったことにはできない」という"内部告発"会見だった。

前川氏は、政府が加計学園による獣医学部新設問題を協議していた時点での事務方の最高責任者。メディアは「衝撃の告白」と大々的に報じたが、政府は「怪文書のたぐい」(菅義偉官房長官)「文書の存在が確認できない」(松野博一文科相)などと否定した。特に、安倍政権の要とされる菅官房長官が、冷静沈着さをかなぐり捨てたような口調で「前川氏に対する個人攻撃を繰り返した」(民進党幹部)ことが「官邸の焦りと危機意識の表れ」(同)と受け止められ、対抗するようにメディアで「暴露」を続ける前川氏とのバトルが「政界を揺るがす大騒動」(自民長老)につながった。

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