バフェットとベゾス、2人の天才と新聞経営 読者志向を失った名門紙の凋落とこれから

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バフェットが見抜いた新聞社の「価値」

自らを「新聞中毒」と呼び、地方新聞の買収を続けている人物に、投資会社バークシャー・ハサウェイ会長で億万長者のウォレン・バフェット(82)がいる。長期投資型のスタイルで、定期的に出す「株主への書簡」という血の通ったコミュニケーションが人気の投資家だ。

2012年の年次報告書に掲載されたバフェットの「株主への書簡」は、新聞事業について、20ページ中3ページを割いている。それによると、バークシャーは、今年5月の株主総会までの15カ月間に、28の日刊紙を総額3億4400万ドルで、買収した。

この中で彼は、以下の条件を満たせば、新聞社は投資の対象であり、将来的に小幅でも利益は出るとしている。

1) 地域に1紙しかなく、競合紙がないこと

2) 地域の結束が固く、ローカル・ニュースを強く欲するコミュニティで発行される中小規模の新聞であること

この持論に基づく買収の結果、2012年度の新聞事業の業績は、6紙の収入が前年と変わらず、比較的中堅のバッファロー・ニューズ(ニューヨーク州)とオマハ・ワールド–ヘラルド(ネブラスカ州)の減収は前年比3%以下にとどまった。これは、大都市の大手新聞の減収幅よりも、はるかに満足がいく結果だ。また、全米50都市中、バッファロー紙とオマハ紙は、住民に占める購読者の割合がトップに近いと報告された。

つまり、彼が買ったローカルサービスに徹する中小規模の新聞は、地域読者も広告も大幅に失ってはいないし、インターネットの影響も抑えられているということだ。

バフェットの慧眼は、新聞社の「価値」がどこにあるのか、彼なりに見抜いている。つまり、ローカルの読者へのサービスだ。

バフェットは同じころ、大手ロサンゼルス・タイムズなどを買収したいかというテレビアンカーの問いに対し、「ノー・サンクス」と答えた。

ワシントン・ポストも、バフェットにとっては、「ノー・サンクス」の部類だ。なぜなら、ポストは、有力紙でありながら、長期間にわたり読者を失う「凋落」が続いているからだ。

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