英国中堅アパレルがこぞって日本を狙うワケ 日本の大手アパレルにはない強みとは

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イギリスで店舗を着々と拡大したテッドベーカーは、1997年にロンドン市場に上場した。翌年にはニューヨークに海外1号店をオープンし、海外展開を開始。2008年には、英国の上位500ブランドのひとつと見なされた証となる「スーパーブランド」を受賞し、名実ともにイギリスの国民的ブランドに成長を遂げた。ケルビンは2011年に、エリザベス女王よりCBE(大英勲章第3位)を受勲している。

日本では、2012年2月に東京・表参道の超一等地に1号店をオープン。犬のロボットのぬいぐるみが入り口にいた店、といえば思い出す人も多いと思うが、こちらは残念ながら計画どおりにはいかなかったようだ。

日本市場での勝算は?

テッド・ベーカー表参道店の店内

しかし少しの間をおいて、2017年2月に原宿のキャットストリート沿いにアジア最大級となる旗艦店「表参道店」を移転オープン。「テッドの東京マシン」をコンセプトとしたフューチャリスティックな店内は、とにかく凝りに凝っていて、映画『2010年宇宙の旅』を連想させる。「前の店舗と比べるとトラフィックは減ったが、周辺の店舗や歩いている客層がブランドと合っていて、手応えを感じている」(同社)という。

テッドベーカーの日本の店舗数は、表参道店のほか、新宿タカシマヤや新宿マルイメンなど8店舗。百貨店、ファッションビルを中心に、今後も少しずつ店舗を拡大していく方針だ。「日本を含めたアジアでは、ブランド認知度の向上にプライオリティを置いていて、今は投資の初期段階。日本ではオフィスウエアとオケージョンウエアの反応が良く、そこに可能性を感じている」(同社)。

一方、オールセインツの日本の店舗数は、伊勢丹新宿店や西武渋谷店など13店舗。ブランドの世界観を見せる路面店、男女別の百貨店、ショッピングセンターと、出店チャネルがバラエティに富んでいて、今期は出店済の店舗を合わせて25店舗の出店を計画している。キムCEOは「日本は世界のラグジュアリーマーケットで3本の指に入る大きな市場。今はブランドをいかに浸透させるかに注力している段階だが、将来的には大きな成長が見込める」と期待を寄せる。

両社が日本市場で成功するカギは、やはり“洗練されたイギリス発のブランド”というイメージをいかに消費者に浸透させるかにかかっている。オールセインツの象徴と言えるライダースジャケットは8万円前後で、ジーンズは1万円台後半~2万円台、Tシャツでも6000円以上。テッドベーカーのメンズのスーツは8万円前後、レディースのワンピースは3万~4万円台だ。両ブランドとも、価格帯は日本の大手アパレルの中価格帯ブランドとほぼ同等の水準で、ファストファッションが浸透した現在の日本では決して安くはない価格帯である。

この価格帯のブランドを今の日本で一から売るには、ブランド価値と認知度の向上が必要不可欠。両社ともSNSを駆使して、その2つの課題に取り組んでいるところだが、先行して日本に進出したトップマンはすでに日本市場から撤退しており、成功するのは容易ではない。2つのブランドの挑戦ははたして吉と出るか。

(撮影:今井康一)

増田 海治郎 ファッションジャーナリスト

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ますだ かいじろう / Kaijiro Masuda

1972年埼玉県出身。神奈川大学卒業後、出版社、繊維業界紙などを経て、2013年にフリーランスのファッションジャーナリストとして独立。『GQ JAPAN』『MEN'S Precious』『LAST』『SWAG HOMMES』「毎日新聞」「FASHIONSNAP.COM」などに定期的に寄稿。年2回の海外メンズコレクション、東京コレクションの取材を欠かさず行っており、年間のファッションショーの取材本数は約250本。メンズとウィメンズの両方に精通しており、モード、クラシコ・イタリア、ストリート、アメカジ、古着までをカバーする守備範囲の広さは業界でも随一。仕事でもプライベートでも洋服に囲まれた毎日を送っている。著書に『『渋カジが、わたしを作った。』

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