5日間で会社が変わる「短期集中会議」の凄み グーグル発「スプリント」の驚くべき効果

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スタートアップ企業に行くと、ビデオゲームはあるのに、ホワイトボード用のマーカーはないというところは少なくない。そういうところでは、もっとホワイトボードを買って、ライティングルームを作れ、と指導している。僕らは何をするにもハイテクを活用したほうがベターだと考えがちだが、アナログツールは最高だ。

――ジェイクさんは先日、GVを辞めてIDEOの客員研究員となりました。今後の目標は何かありますか。

今後はIDEOの客員教授を通じて、いろいろなアイデアを取り入れながら、執筆活動に従事したいと話すナップ氏(撮影: 今井康一)

僕の人生のミッションは時間を有効に使うことだ。時間は誰にでも平等に与えられている。その中で、自分の時間を有効に使いたいし、人々が有効に使う手助けもしたい。

スプリントでは、会社での5日間を使って新たな製品やサービスのアイデアを出し、それを試したり、デザインし直したりするプロセスを考え出した。その5日間をどうやって有効に使うかを考えたわけだ。

いい意味で時間がゆっくり流れるように

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GVを離れた今は、それを自分の人生に応用したい。どうやって有効に時間を使うか、そうするためにどうしたらいいか、ということを突き止めていく。自分にとって今、最も大切なものは何かと考えたときに、それは書くことだと気がついたので、あと2、3冊は本を書きたい。人々が時間を有効活用するのを助けるために、今デフォルトとなっていることをもう一回見直したいと思っている。

――スプリントを経験したことで、ジェイクさんの人生も充実したんですね。

間違いなく。ピンク・フロイドの曲で、「10年というときが過ぎ去ったことにある日気づくが、誰も走り出すときを教えてくれない」という歌詞があるんだが、マイクロソフトに勤めて5、6年たったときにこの曲を聴いて「そういえばこの5年間で何があったんだっけ?」と恐ろしくなったことがある。こんな生活を繰り返していると、時間の感覚は薄れ、印象深い思い出をつくろうという気もなくなってくる。このときに生活を変えなければと思った。それでグーグルに転職したんだ。

そのときからずっと、「時間をちゃんと有効に使っているか」「新しい思い出をつくっているか」「トライをしているか」「新しいことを学んでいるか」と自分に問い続けている。

そういう中でスプリントを始めて、いろいろな会社の人にあって話を聞き、新しいことをたくさん学んできた。最もエキサイティングなのは、彼らやグーグルから学んだことを多くの人にシェアできることだ。この経験のおかげで過去10年間は楽しい思い出がたくさんできたし、いい意味で時間が遅く流れるようになったと感じている。

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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