5日間で会社が変わる「短期集中会議」の凄み グーグル発「スプリント」の驚くべき効果

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チームビルディングの観点でも、スプリントは役に立つ。米国でもチームの交流を深めるためにボウリングやカラオケに行ったりするが、こうした交流は楽しいものの、チームビルディングのうえでは意味がない。

ある仕事やプロジェクトに参加するとき、望ましいのはその仕事に対して興味を持ち、自分が会社やそのプロジェクトにおいてどういう役割を果たせるか思いをめぐらせることだ。スプリントでは、さまざまな専門性を持った優秀な人たちと1つの目的に向かって時間を過ごすことで、仕事の目的を共有し、チームメンバーとの絆を深めることができる。陳腐に聞こえるかもしれないが、スプリントには本当にチームを一体化させる力がある。

ホワイトボードほど優秀なツールはない

――スプリントで使うものは、ペンと鉛筆、ホワイトボード、付箋、シールとアナログなものばかりで、デジタル機器の出番はありませんね。

テクノロジー企業で長く働いた割には、技術に対しては懐疑的なところがあって(笑)。スプリントでは、こうしたアナログツールのほうがいい理由がいくつかある。1つは、パソコンやスマホはいろいろな意味で邪魔になるという点だ。5日間でスプリントでやろうとしていることを成し遂げるには、こうした邪魔を排除しないといけない。すべての参加者に100%集中してもらわないとならない。

もう1つは、基本的に僕らの脳はアナログのものに慣れているということだ。人間がパソコンやスマホ、アプリを使い始めたのはここ数十年のことだ。議論を有効に進めるには、結局ホワイトボードや紙を使うのが1番だ。ホワイトボードや紙に書いてあることは、空間記憶として残り、デジタル機器に保存されているメールやファイル、書類の中から必要な情報を探すよりずっと効率的だ。

また、スマホやパソコンの場合は、みんな下を向きそれぞれの世界にこもる傾向があるが、それを排除すれば全員が同じモノを見て、経験を共有しやすくなる。ホワイトボードほど完璧なツールに巡り合ったことはないし、白い紙のような役割を果たせるデジタルツールはこの世にまだない。

――ホワイトボードへのこだわりは著書からも感じました。アイデアは何でもホワイトボードに書く、というのは、シリコンバレーのカルチャーですか。

実はシリコンバレーでも僕はいろんな人に「社内にもっとホワイトボードが必要だ」と言っている。

いまや典型的なハイテク企業はどこも、会議室に行くとスライドがあって、みんながパソコンをつなげる電源があって、みんなパソコンで同じスライドを見ながら会議をしている。ホワイトボードが使われる余地がない。

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