5日間で会社が変わる「短期集中会議」の凄み グーグル発「スプリント」の驚くべき効果

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――スプリントは米国外でもたくさん行われているようですが、文化の違いなどは影響しないのでしょうか。

世界各国に広まっていて、これは本当にスーパークールな状況だ。これには、スプリントが基本的にどの組織も抱えている課題にアプローチしていることがあると思う。たとえば、問題解決にはいろいろな視点や専門性を持った人が集まることが大事だというのは世界の共通認識だと思うし、誰もが納得する解決策を導き出すには誰か1人に任せたり、ブレーンストーミングをしまくったりすることでは難しいというのも、世界共通の話だと思う。決断を下すのが難しいというのも、プロトタイプのテストを行うのが大事だというのもしかりだ。各国で異なるのはプロセスにおける細かいところだと思う。

「日本式スプリント」の実態

スプリントのプロセスは非常に詳細だが、細かい部分はローカライズされていい。日本ではAQというデザイン会社が、僕がスプリントに関してブログを書き始めた2、3年前から、(他社の)スプリントの支援をやっている。同社の話では、日本の場合、プロトタイプをテストする際の顧客の集め方が米国とは異なる。

日本企業は参加者が入ったり抜けたりすることにはより柔軟なようだね。えらい人が5日間どっぷりスプリントをやるのではなく、顔を時に出すようにするというのが重要だと聞いた。それから、スプリントをやる前に、それぞれがスプリントに参加する意味や、組織における自分のポジショニングなどを理解することも大事だそうだ。

もう1つ、日本のスプリントの特徴で興味深くてビックリしたのが、たとえばプロトタイプに対して顧客がどう反応するか意見を出し合う場合、上下関係に配慮する日本企業ではレゴ人形を使ってそれぞれの役割を演じるのが効果的ということだ。レゴを使って自分の上司に対して「そのアイデアが受けるとは思えない」とか伝えるわけだ。これは衝撃的だったが、このやり方だとやりやすいらしい。

――スプリントを経験した企業はどのように変わりますか?

スプリントは会社の軌道修正を図ったり、大きなプロジェクトを成功させる助けになる。本の中では、ヘルスケア業界向けソフトを開発している企業の例を紹介しているが、この会社は大きなプロジェクトを抱えていて、スプリントはこれに資金を投じて進めるための自信につながった。

数年かけて最近ようやく始動したが、会社にとっては非常にリスクの高いプロジェクトだった。スプリントでは、こうした会社を変えるような、会社を新たなビジネスに導くようなプロジェクトに手を付けられるようになる。

スプリントを通じて企業文化も変わると感じている。グーグルがいい例だ。グーグルは僕が入ったときから、リスクをとることに寛容なカルチャーがあったが、デザインについては長期にわたって使えるように「最初からちゃんとしたものを作らないと」という考えが強かった。それが、スプリントによって早い段階から実験や協業をする体制に変わってきた。つまり、より柔軟にプロジェクトに取り組めるようになったわけだ。

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