ホンダ「シビック」日本復活の意義とこだわり 7月に登場する10代目は何がスゴいか

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シビックの場合、日本国内では初代(1972年発売)が約69万台で最も売れたが、バブル前後の4代目(1987年発売)も約61万台、5代目(1991年発売)も約50万台となかなかのヒットを飛ばした。平成の初期は街中でシビックをよく見掛けたものだ。この頃のシビックのイメージが強く印象に残っている、40~50代の働き盛りは少なくないだろう。それは「小さくてキビキビ、そして手頃な価格で買えるエントリーカー」だ。

車内は同クラスのセダンやハッチバックと比べれば広々している

10代目シビックはキビキビ走るが、大きくて立派なクルマになった。ホンダとして手頃に買えるエントリーカーとしての役割はもはやフィットに譲っている。

車内は同クラスのセダンやハッチバックと比べれば広々している。ただし、ワゴンほどたくさんの荷物は積めない。ミニバンのように多人数は乗れない。コンパクトカーほど経済性に優れているワケでも、目を見張るほど速いワケでもない。

とはいえ、昨年、「日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)2016-2017」を受賞したスバル「インプレッサ」はシビックと同カテゴリながら、新車乗用車販売の車名別ランキングで上位に食い込む健闘を見せている。シビックも2016年にアメリカでCOTYを獲得しており、専門家から見た評価は高い。

昔ながらのイメージをどう破っていくか

おそらく、10代目シビックが売れる要素は経済性や利便性ではない。ホンダというブランドが好きか。そうではなくても、シビックの車名を引き継いだ10代目の世界観が気に入るか。かつてのシビックよりはおそらく高くなると思われる価格に見合う価値を見いだせるか。過去のホンダ車オーナーを含めて、そのフィーリングの合うユーザーが日本人の中にどれだけいるかが、はっきり映し出されることになりそうだ。

シビックはホンダの乗用車メーカーとしての歴史そのものだ。累計1億台の世界生産で約4分の1を占める重要車種でもある。「『アコード』と併せてシビックの車名にはこだわりがある。昔ながらのイメージをどう破っていくか、なかなか難しいと思いつつもチャレンジしたい」(前出の寺谷氏)。

ホンダの国内販売は、SUV「ヴェゼル」が好調だが、それ以外は相対的に苦戦している。「グローバルなクルマを売るなら、むしろシビックよりもSUV人気が盛り上がっている今、『CR-V』が欲しい」「トヨタや日産の競合車種に押されているステップワゴンのハイブリッド仕様を急いで投入してほしい(今年10月に登場するとの観測報道あり)」などという現場の声もあると聞く。

それらよりも優先させたシビックの日本復活。「ホンダは車名を継がせるのがうまくない」とは複数の自動車ジャーナリストが指摘するところだ。ホンダブランドの根幹にかかわる車種でもあるだけに、そうした評価も覆し、少なくとも日本で散々だった8代目(2005年登場)の約6万6000台を下回るような「大失敗」だけは許されない。

武政 秀明
たけまさ ひであき / Hideaki Takemasa

1998年関西大学総合情報学部卒。国産大手自動車系ディーラーのセールスマン、新聞記者を経て、2005年東洋経済新報社に入社。2010年4月から東洋経済オンライン編集部。東洋経済オンライン副編集長を経て、2018年12月から東洋経済オンライン編集長。2020年5月、過去最高となる月間3億0457万PVを記録。2020年10月から2023年3月まで東洋経済オンライン編集部長。趣味はランニング。フルマラソンのベストタイムは2時間49分11秒(2012年勝田全国マラソン)。

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森川 誠一 WaveSplitter Japan CTO

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もりかわ せいいち / Seiichi Morikawa

1993年からインターネット構築に携わり、数々の実験的イベントを主導。インターネットの可能性を広げる活動に従事。その一方サーキットにも足繁く通い、インタープロトを始め数々のアマチュアレースにも参加。インターネットが車社会に及ぼす影響について考えるも現実の変化に追い抜かれていると感じる日々。

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