中国の魅力は「手」から、「口」へ、そして「頭」へ

中国の魅力は「手」から、「口」へ、そして「頭」へ

民主党参議院議員・藤末健三

7月末に約1週間、上海と杭州、そして香港をめぐってきた。

そこで感じたのは、もはや臨海部は「手」、つまり労働力を求めるのではなく。「口」つまり市場を求めて企業が入っていること。そして、もはや企業の立地の目的が「口」を超え中国の「頭」つまり頭脳を目指すものに変わりつつあるということだ。

アジアの優秀な頭脳をいかに日本産業のために活用するかが、これからの日本の大きな課題となっていくであろう。そのためには、移民制度・移民の管理制度の充実や留学制度の整備などが必要だが、今回は、中国の変化を見てみよう。

手としての中国

そもそも、中国の魅力は、安い労働力、つまり「手」であった。しかしながら、上海や杭州あたりでは賃金が上昇しており、安い労働力としての競争力はなくなっている。

今回、杭州のソフト開発アウトソーシング企業を訪問した。日本のシステム会社から開発を受託しているが、その賃金コストは日本人の半分くらいまでに達しており、管理コストなどを考えるともやは価格の優位性だけでは勝負できないと聞いた。

日系企業の経営者の話では、安い労働力を求める企業はどんどん内陸部に進出していると言う。

日本の中国からの輸入を見ていると、2000年以降に急増しており、現在では米国からの輸入の2倍近くになっている。この輸入の大部分は中国に進出した日系企業のものであり、日本企業が安い労働力を求めて中国に進出したかがこれからも推察できる。

中国側からの観点で見ると、1992年の�小平(トウ ショウヘイ)の南巡講話をきっかけに、世界から中国への直接投資が増大している。2005年末には残高で3000億ドルを突破した。その中国の直接投資受入のうち約7~8割が製造業であり、うち電子機器、輸送機器の割合が大きく。日系企業だけでなく他国の企業も製造業を中心に中国に労働力を求めて進出したことがうかがい知れる。

口としての中国

次に巨大市場としての中国・アジア、つまり「口」に関心が移った。

例えば、日本の貿易に占める中国の割合が近年急増。輸入では2002年に米国を抜いた。2006年の日中貿易は輸出約11兆円、輸入約14兆円、合計約25兆円で日本の貿易の17%を占めるようになっている。

日本から中国への輸出を見ると2000年代から中国への輸出は急増しており、2006年にはEUへの輸出より中国への輸出が大きくなっている。

中国に行って「口としての中国」を実感できるのは、日系企業の食品を食べるときだ。例えば、筆者の故郷熊本のラーメンチェーン店「味千ラーメン」は中国に進出し、その売り上げは国内よりも中国の方が大きいと聞く(関連記事)。

また、サントリービールは「三徳利」というブランドでビールとウーロン茶を販売している。上海人と話すと「青島ビールは地元のビールではないが、三徳利は地ビールだ」、「三徳利は今までペットボトルでウーロン茶を飲むという新しい文化を上海に持ってきた」と言う。お世辞もあろうが、そうまで言わせるだけのがんばりがサントリーにあるのは確かだ。実際、上海でのビールはトップシェアらしい。そして、コンビニのローソンも数多くの店舗を上海に展開している。

頭としての中国

さて、これからは、中国・アジアの知的資源、つまり「頭」をいかに利用するかが、課題となると見ている。

今回、上海郊外にある「紫光サイエンスパーク」に訪問したが、そこには東レ、日清、ヤマハ、SMC、オムロンなどの研究所が進出していた。このサイエンススパークは、江沢民の母校である上海交通大学と華南師範大学に隣接しており、両大学は、多くの人材を企業に提供している。

実際に香港で訪問した日系企業は、清華大学との共同研究・共同事業を進めており、研究開発を進めるだけではなく、その製品化まで清華大学の教授が経営する企業と一緒に行う計画だと言う。一応、清華大学の顧問をしている(実際の貢献はほとんどゼロ)筆者もここまで中国の大学と日系企業の連携が進んできたかと感心した。

現在、中国政府は、民間の研究機関だけではなく先進国の政府研究機関の立地を促している。例えば、マックスプランク研究所の共同実験室:上海生命科学研究院に設置(上海)、中独科学センター:自然科学基金委員会とドイツフンボルト財団が共同設置。シンポジウムの開催、若手研究者等のドイツへの招聘を実施、などがある。

英国タイムズ誌の世界大学ランキングでは、北京大学は東京大学とほぼ同じとなっており、中国政府はGDP の伸びを上回る積極的な研究投資を継続している。また、中国の全研究費は「購買力平価では日本を上回る」ことにも注目する必要がある。

中長期科学技術発展計画(~2020年)では、「自主イノベーション(創新)」を政策目標に掲げ、海外導入技術からの脱皮を目指すなど積極的な政策展開している。中国の研究開発能力は今後とも大きく進歩すると見込まれ、今後はこの中国の頭脳をどれだけ活用するかが日系企業にも問われることとなろう。

(写真:吉野純治)

ふじすえ けんぞう
1964年熊本県生まれ。東京工業大学卒業後、通産省(現・経産省)に入省。マサチューセッツ工科大学大学院、ハーバード大学大学院を修了。99年、東京工業大学で博士号取得。東京大学講師、助教授を経て04年参院選初当選。
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