東芝の半導体売却、WDが日米連合に合流も 経済産業省が「障壁」に

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経産省が、懸念するのは半導体技術の国外流出だ。韓国や台湾はもとより「米国の事業会社もダメという立場」(関係者)と言い、2次入札で最も高い価格を提示した米半導体大手、ブロードコム<AVGO.O>も排除する姿勢だ。

ただ、半導体の競争力を考えた場合、「買収するだけでなく、毎年3000―4000億円に上る設備投資ができなければ、国際競争から取り残されてしまう」と業界関係者は話す。

このため日米連合は「しょせん『烏合の衆』でしかすぎない」(同)という批判もある。実際、KKRなどの連合は2次入札以降、現在までに買収資金の負担割合や、買収後の事業計画などもまとめられていないのが実情だ。

東芝の合弁パートナーであるWDは、合弁事業の契約書を盾に、自らに優先交渉権を与えるように要求。さらに他の事業会社への売却は一切認めず、自らによる過半数以上の出資にこだわってきた。

しかし、足元では少額出資もやむなしとの態度に変わりつつある。1つは、WDが過半数を得た場合、各国の独占禁止法に抵触するおそれが高く、東芝が求める今年度内の売却手続き完了という時間軸を超えかねないためだ。

このためWDは、KKR・革新機構などと組んで、議決権のない優先株で出資し、将来的に株式を手放さざるを得ないKKRや革新機構などの普通株式を譲り受ける形で、事業を譲り受ける案に持ち込みたい考えとみられる。

カギ握る経産省の意向

経産省が目論んだ「日の丸連合」が事実上崩壊する中で、金融機関などからは「そもそも『日の丸連合』とか『奉加帳』とか、いつの時代の話だというのが率直な感想」(別の金融機関役員)という厳しい批判も出る。

今後の先行きについて「技術国粋主義にこだわる経産省が、どのように落としどころを探ろうとしているのか。それによって、入札の行く末が決まりそうだ」(主力行幹部)との見方が強い。

民間企業の事業売却が、官庁の意向に左右される事態になっている。

(布施太郎 浜田健太郎 山崎牧子 編集:田巻一彦)

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