選びきれない、でも自分で決めたい消費者 なぜ、日本人はモノを買わないのか?【最終回】

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情報の取捨選択に迷う消費者のストレスを軽減できるか(伊勢丹新宿店、撮影:尾形 文繁)
絶え間なく入ってくるモノにまつわる、断片的な情報に優先順位をつけ、つなぎ合わせて判断することは大変な労力である。しかし、一方で、消費に失敗したくない気持ちから、情報収集をあきらめることもできない。第3回(最終回)は、こうしたジレンマからくる、消費者のストレスをどう軽減するか。消費者は「オススメ」=「選択肢のスクリーニング」を求めている。(なお第1回消費者は、“情報疲労”している、第2回リアルに回帰する、消費者)も、ぜひご一読を)

「私」の消費に影響を与える、「みんなの経験」

多くの消費者は一定金額以上のものを買おうとする時、まずインターネットで売れ筋情報やユーザー評価を参照するだろう。データによれば、約7割の消費者が、「企業情報よりユーザー評価を重視したい」と回答している。女性、特に若年層ほどその傾向が強く、「多くの人がよいといっているものならば安心だ」という心理傾向と重なる。たとえば、@Cosmeはユーザー評価サイトの中でもよく取り上げられる成功事例だが、なるほど、化粧品分野のターゲットである若年女性の特性に非常にマッチしたサービスだといえるのである。

あまり人が買っていないようなもの、ユーザーの評価が低いものについては、「何かそれなりの理由があるのだろう」と判断して、検討の俎上に載せない。逆に、売れ筋ランキングの上位や自分と似た属性や志向性を持ったユーザーが高い評価をしているものについては、重点的にそのメリットを比較しようとする。そうすることによって、選択肢を絞り込み、検討すべき情報を効率的に減らすことができるからである。

不特定多数のユーザー評価が重視される理由として、もう一つ言えるのは、評価の「第三者性」が担保されている点である。情報源別のイメージで、「実際の利用者(インターネット上の不特定多数)」が他の情報源を上回って高かったのは、「売れ筋・人気商品がわかる」「流行の先端がわかる」といった多数の動向をみたいとする項目に加えて、「情報が偏っていない」「裏話・豆知識など非公式な情報がわかる」といった第三者性を評価する項目だった。商品・サービスの売れ行きに対して利害関係を持たないユーザーの評価であれば、消費者は信頼できると考えるのである。

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