高学歴56歳男性が「孤独な貧困」に陥った顛末 「本当は東大医学部に行きたかった」と後悔

✎ 1〜 ✎ 14 ✎ 15 ✎ 16 ✎ 最新
拡大
縮小
ケンさんは猫背でひどくやせ、指の爪は長く伸び、黒い汚れがたまっていた(編集部撮影)
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。今回は双極性障害があり、生活保護を受給して生活するケンさん(56歳)のケースに迫る。

 

この連載の一覧はこちら

男は店先の路上にしゃがみ込み、たばこをふかしていた。猫背でひどくやせている。フィルターをつまむ指の爪は長く伸び、黒い汚れがたまっていた。待ち合わせをした人だろうか。多分、違う。なぜかそう思い、男の前を通り過ぎ、約束していたファミリーレストランへと入った。しかし、やや遅れて現れたのは、まさにその男性だった。

障害年金と生活保護費で暮らしている

ケンさん(56歳、仮名)。東京都内の私大を卒業し、何度か仕事を変えた後、介護関連会社で人事・経理の職に就いた。年収は800万円ほどあったが、繁忙期は明け方3時、4時ごろまでの残業が当たり前。40代の頃、ストレスからアルコール依存症と双極性障害を発症して失業した。その後は、ローンが残っていた持ち家を手放し、離婚、自己破産――。1人娘は親族の養子となった。現在、仕事はなく、障害年金と生活保護で暮らしている。

テーブルに着いたケンさんはやおら、元妻への批判を始めた。

「15歳年下なんです。大学の卒論を書くのを、僕が助けてあげたら、うちに入り浸るようになってしまって。できちゃった婚です。好みのタイプじゃない。家事も何ひとつ、やってくれなかったし。一度、(出演料で)小遣い稼ぎでもしようと思ったのか、テレビのゴミ屋敷特集の取材を受けていましたね。リポーターが“ああ、ゴミの中に赤ちゃんがいます!”と言っていました。離婚の原因? 僕が30歳年下の子と仲良くなったから。キャバクラで出会った子です」

次ページ元妻とはネットで知り合った
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT