18歳で妊娠した女子高生が学校から受けた罰 キリスト教の相反する2つの価値観

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ランクルスの経験は、デリケートな問題を照らし出す。結婚までは純潔を守ることを提唱するキリスト教系学校が、妊娠したティーンエージャーをどう扱うか、という問題だ。

「2つの価値観がぶつかっている」。こう話すのはバージニア大学の社会学者、ブラッド・ウィルコックスだ。彼は結婚と家族についての調査、「ナショナル・マリッジ・プロジェクト」を指揮している。「学校は純潔に対するある種のこだわりを手放さない。同時に、キリスト教グループの多くでは、生命を尊重するために全力を尽くすべきだと考えられている」。

キリスト教の学校が両者のバランスを取るのは非常に難しく、学校によって対応はまちまちだと、キリスト教学校国際協会の理事長、リック・ケンプトンは言う。同協会には米国や諸外国の約3000校が加盟している。

ケンプトンはランクルスについて言う。「彼女は正しい選択をした。しかし学校としては、それを賛美してほかの若い女性たちが『それも良い選択肢なのだ』と思うようになっては困る」。

「クリスチャンとして出直している」

ケンプトンによると、一部の学校は、妊娠した生徒は自宅で過ごすよう求めるという。ランクルスについてもその方法が検討された。学校理事会が議論をしている間、彼女は2日間停学となった。当時、学校理事会は彼女の父親のスコット・ランクルスが率いていた。

銀行のバイスプレジデントであるスコットは、娘についての決定にはかかわらなかった。そして、最終的には娘に対する扱いに怒りを感じ、理事会を離れた。「誰かがルールを破ったら、ルールを破ったそのときに罰を与えるのが普通だ。そうすれば罰は過去のものとなり、また白紙の状態から前に進むことができる。娘の場合は、罰は4カ月後に設定され、そのために彼女のこの1年は台なしになった」。

自宅のベッドの横には超音波写真を額に入れて飾っている(写真: Nate Pesce/The New York Times)

「クリスチャンとして出直している」というランクルスは、両親の力を借りながら自分の子ども(男の子)を育てる予定で、自宅のベッドの横には超音波写真を額に入れて飾っている。

彼女は子どもを「神の恵み」と言うが、子どもの父親については話さなかった。彼はヘリテージ・アカデミーの生徒ではなく、彼と結婚する予定はないという。

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