TBS「小さな巨人」が描く縦社会の生き抜き方 「刑事版・半沢直樹」には学びがいっぱいだ

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たとえば、相手が小野田のように「絶対的な力を持つ」、あるいは「近寄りがたい雰囲気がある」上司なら、格差を承知であえて近づくなど、他の社員とは異なる行動を見せて印象づけるのが得策。上司の視界に入ったうえで、認めさせるための糸口を探るというスタンスが攻略の第一歩になります。

「部下の心をつかむ」3つのスタンス

香坂は上司と向き合っているだけではありません。ここまで左遷先の芝署、豊洲署の刑事たちに熱く語りかけるシーンが何度となく見られました。

3話で所轄の情報が捜査一課に漏れていたときも、「今、われわれがすべきことは犯人探しではない。捜査を続けましょう」と浮足立つ刑事たちをなだめていましたし、捜査一課を手伝っていた若手刑事の中村(竜星涼)をまったく疑いませんでした。それどころか、「今回の件はいいアピールの場になる。努力が認められれば捜査一課に引き上げてもらえるかもしれない。こんなチャンスめったにないぞ。絶対に逃すなよ」と背中を押していたのです。

その後、中村を脅し、裏で操っていた芝署副署長・杉本(池田鉄洋)の不正を暴いたシーンでは、「私の大切な部下を随分と粗末に扱ってくれましたね」と部下を守る姿勢を明確にしました。他の部下もそろう中でハッキリ言い切ったところに、強いリーダーシップが表れていたのです。

その他にも、扱いづらい現場たたき上げの刑事・渡部(安田顕)と出会った当初から分け隔てなく接したり、「よし、ここからが本当の捜査だ。所轄の力、見せてやろうじゃないか!」と士気を高めたり、上司の指示に背いて服務規程違反を問われかねない状況で「ああ、これ以上動けば(処分されるだろう)な。だが私のことは心配するな」とブレない姿勢を見せたり、芝署編の事件解決のときに「ありがとう。みんなのおかげだ」と全員に感謝の言葉を伝えるなど、部下の人心掌握に長けた姿を見せていました。

さらに香坂は、部下の所轄刑事たちから見たらエリートといえる捜査一課出身なのに、「誰よりも汗を流して事件解決にあたる」という姿を部下たちに見せ続けています。一見、リアリティのない理想像のように見えますが、部下に対する香坂の接し方はそんなに難しいものではありません。「明確かつシンプルな言葉で指示を出す」「自らも一緒に動いて汗をかく」「偏見を持たず、分け隔てなく接する」という3つのスタンスがあれば十分なのです。

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