TBS「小さな巨人」が描く縦社会の生き抜き方 「刑事版・半沢直樹」には学びがいっぱいだ

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香坂の行動で象徴的なのは、「結果を出すためなら、上司の指示をスルーし、多少の悪事もいとわない」こと。実際、捜査一課長・小野田や芝署署長・三笠(春風亭昇太)から「捜査はするな」「待機しておけ」と指示されても極秘で捜査を進めたほか、新聞記者に内部情報をリークするシーンもありました。

これを一般企業に置き換えると、「支社の社員が、本社のトップや支社長の指示をスルーして、独自の方法を採用する。取引業者と内密に便宜を図り合う」ということになります。「ドラマだからできるだけで、現実的に無理だよ」と思うかもしれませんが、逆に本社のトップや支社長の指示を聞いているだけ、取引業者と真正面から交渉するだけでは、これまで以上の結果を得ることは難しいでしょう。もし「過去の実績や想定を超える結果を残したいのなら、ここぞの勝負時にはそれくらいのことをするべき」ということなのかもしれません。

憎き上司にもあえて近づき、攻略する

香坂の行動で、もう1つ特筆すべきは、所轄の刑事にすぎない立場ながら、現場トップの捜査一課長・小野田に何度も電話し、会いに行き、報告や直談判をしていること。一般企業に置き換えると、支社の社員が支店長を飛び越えて、本社の専務や部長と連絡を取り、報告や直談判をしていることになります。

「そんな無礼は許されることではない」と思いきや、小野田は事件解決を最優先する現実主義者であり、香坂の能力を買っているため、ミスを叱責することはあっても会いに行くことや直談判をとがめることはありません。あくまで香坂は、小野田の性格と自分への評価を踏まえたうえで、このような行動を取っているのです。一般企業でも、結果主義者で自分への評価が高い役員がいたら、臆せず会いに行き、ときには直談判してもいいのではないでしょうか。

また、左遷の決定打となる証言をした「憎き小野田を避けずに向き合う」という香坂の潔さも注目したいポイント。多くの人々が働く一般企業では、「嫌いな人はできるだけ避ける」のが良い処世術のように言われていますが、相手が避けて通れない大物なら向き合わなければいけません。

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