脱北エリートが語る「北朝鮮の体制転換」3条件 内実を知るテ・ヨンホ氏に独占インタビュー

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結果的に時の最高権力者が、自分が死ぬ間際に「体制を維持してくれそうな後任」を選ぶ。それが自分の権威を守ってくれる血族に行き着き、今どき権力の世襲という浮世離れした中世の王朝政治が執り行われているのである。

北朝鮮の体制転換に必要な3大ポイント

ここまで、「五流に転落した独裁政権の3大欠点」について、論じてきた。それでは、金正恩が本コラムを読んで、「一流の権力者」を目指すにはどうしたらよいのだろうか? ここまで述べてきた、権力維持を自己目的化するのをやめ、集権化を進めず次世代リーダーを育てて政策論争で代替的選択肢を検討し、最後は「権力移譲の明確なルール」を策定することが大切なのは当然である。

しかし残念ながら、金正恩が私の『最強の働き方』を愛読している可能性は低く、彼が反省することはまずないであろう。それでは、私たちを含めた国際社会は、この「粛清の王朝」の暴発を防ぎつつ体制を変革するために、どのようなことができるのだろうか?

以下に述べるのは、史上最高の脱北エリート、テ・ヨンホ氏に伺った、北朝鮮の体制転換に必要な3大ポイントである

1.北のエリートへの復讐をせず、エリート層の蜂起を支援

テ・ヨンホ氏曰(いわ)く、「国際社会は、北朝鮮のエリート層が反旗を翻す手助けをするのが大切だ」ということだ。フランス革命も実は貴族革命と呼ばれるほど、王政に反発する貴族の反乱が背景にあったことはよく知られているが、「北朝鮮に関しても、北のエリート層の蜂起を手助けしなければならない。そのためには韓国と統一した後に、北の指導者層に『復讐』しないと保証することが大切だ」というのだ。

テ・ヨンホ氏自身、韓国への亡命を決めたときにいちばん心配だったのが、その後の自分と家族の生活である。自分は4人家族だから20坪くらいの家が与えられて、生活支援金がいくら支給されてなど、韓国に亡命する脱北者に関する法律を読み込んだという。また、今のエリートとしての仕事を放棄して、韓国で自分にどのような仕事があるのかも非常に心配だったという。

自分の子供がイギリス名門教育機関を卒業た、いまさら北朝鮮の統制社会に帰ることはできない、この奴隷生活の連鎖を自分の代で断ち切らなければならないと決意したときは、韓国でどんな仕事をしてでも何とか生きていくしかないと思ったらしい。

特に北朝鮮ではつねに粛清と政治的報復の歴史が続いてきたので、政権が変わることで自分が復讐されることへの恐怖心が、北朝鮮のエリート層が蜂起に踏み切れない一因だと語るのだ。

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