伝統野菜「黒皮かぼちゃ」は他と何が違うのか このかぼちゃは普通のかぼちゃではない

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美味しい「黒皮かぼちゃ」を作るために一番大切なのが、収穫の時期をしっかりと見極めること。完熟具合を示すのは、果実を保護するために生じる「ブルーム」と呼ばれる白い粉だ。

「収穫時期の目安はこれ、皮の表面に白い粉がついているでしょう? 真っ黒ではなく、少し白っぽく粉をふいているのが完熟の証なんです。それから、ツルと実をつなぐ境目の果梗(かこう)という部分の色が黄色くなっていること。緑色のものは収穫するにはまだ早い。あとは、完熟したかぼちゃは触ると皮がツルッとするんです。長年つくっていると、触っただけでわかるようになってきます」。

実際に一つ収穫してもらうと、切り口からじわっと玉のような水が染み出してきた。

富永さんが「生命力やね」と言うとおり、かぼちゃがツルを通して土からしっかりと水分を吸収して、大きく実っているなによりの証拠だ。

地元の伝統野菜を守り続けたい

富永さんの奥さんが手製の「黒皮かぼちゃ」のオリーブオイル焼きと煮物を用意してくれた。食べた瞬間はしっかりしているのに、噛むほどにきめ細かい果肉が絹のようにほどけていく。シンプルな味付けがよく染み込んで、「黒皮かぼちゃ」の上品な甘みと味わいを引き立たせてくれている。

「黒皮かぼちゃの味わいが一番よくわかるのは、やっぱり煮物。これからの時期はタケノコが美味しいから、一緒に煮付けるのもいいよ。うちでは味噌汁の具にもするし、冬はおでんに入れたりね。煮崩れないから、おでんに入れても大丈夫なんです」と富永さんは自慢のかぼちゃの食べ方を教えてくれた。

生目で生まれ育った富永さんは、20年前にサラリーマンを辞めて「黒皮かぼちゃ」を作り始めた。そこには伝統野菜を、残していきたいという想いがあったという。

「宮崎にしかない野菜だもんね。収量が多くないのでつくるのは大変ですが、守っていきたいなと思っています。いまは関西への出荷が多いですが、今後は関東の人にもこの味わいを知ってもらえたら。大事に育てて、収穫する瞬間が一番楽しいです」と笑う富永さん。

宮崎が誇る伝統野菜「黒皮かぼちゃ」。これまで知っていたかぼちゃとはまったく違う味わいを、一度体験してみてほしい。

(Writer : ASAKO INOUE / Photographer : YUTA SUZUKI)

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