銀座「食パン専門店」に行列する人のお目当て 国産小麦の実力はどこまで向上したか

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北米産の小麦を使った小麦粉は品質が安定しているが、それは大量生産された中から、最高級もしくはそれに準じる品質の小麦をブレンドしているからだ。なにしろ、アメリカの小麦生産量は2014/2015年で、世界5位の約5515万トン。カナダは6位で約2942万トンもある。

一方、日本の小麦生産量は2014年度で世界36位、約85万トンにすぎず、「ゆめちから」は6万トンあまりしかない。本州以西の他の品種はもっと少ない。量が少なすぎると製粉の際にもハンデが生じる。石臼挽きになってしまうため、外皮のフスマが混じってしまい、パンだねがふくらむのを阻害する。食パンのように大きくふくらませるパンを作りにくいのだ。

セントル・ザ・ベーカリーが成功したワケ

量が少ないがゆえに割高で、品質も安定しない。ハンデだらけの国産小麦を使うには「高い価値を認めてもらう売り方をしないと駄目です」と原田氏は言う。

その路線で成功したのが、前述のセントル・ザ・ベーカリーだ。同店の最大の強みは、小麦粉の品質にブレが生じても、カバーできる職人の技術力。西川社長は、もともと地元でヤマザキパンとシェアトップを争う兵庫県加古川市の製パン会社、ニシカワ食品の3代目だ。ル・スティルを起こして2003年6月に東京・渋谷で、フランス産小麦を使い、販売するパンから内装まですべてフランススタイルで統一した人気店、「VIRON」を開業している。

セントル・ザ・ベーカリーは、確かに国産小麦の高価格のパンが売れることを証明した。しかし、そのスタイルは、どこのパン屋にもまねできるものではない。また、銀座で1斤400円が成り立つとしても、スーパーやコンビニと戦う住宅街のパン屋には難しいこともある。

では、国産小麦を使ったパンを増やすのは難しいのだろうか。

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