OPEC総会で減産以上のサプライズはあるか 米国での産油量は意外にも増えていない

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もし減産期間の9か月間の延長と減産幅の拡大の両方が合意されるなら、市場の想定を超える内容になるため、サプライズとなろう。年末までの減産期間の延長のみであれば、すでに織り込まれており、サプライズはないが、それでも将来的に原油需給が改善することは確実であり、原油市場においては強気材料であることに変わりない。

OPEC加盟・非加盟国による減産の主目的は、原油価格の引き上げである。サウジやロシアなどは、表向きは「世界の石油在庫の調整が減産の目的である」としているが、現状の原油価格の水準では財政面におけるきわめて厳しい状況を改善することは困難だ。したがって、現状のような低水準の原油価格の水準引き上げが減産の主目的であることは明白であろう。

主要産油国のターゲットは1バレル55ドル~60ドル

こう考えると、今回の会合での減産期間の年末までの延長は既定路線であり、さらに9か月間までの延長と減産幅の拡大に関する議論がなされる可能性は十分にある。少なくとも、現在の50ドルをわずかに超える程度の原油価格の水準は、減産を決定した当時の見通しからすれば、あまりに低すぎる。

したがって、55ドルから60ドルとみられている目標とする水準にまで引き上げるために、市場を驚かすような決定がなされる可能性は十分にあると考えられる。それでも、一部の産油国にとっては、単年度の経常収支を均衡させるには不十分であろう。経常収支の均衡には、イラクやサウジでさえも55ドル程度は必要とみられているが、アルジェリアやオマーンなどは70ドルから75ドル、カザフスタンなどは80ドル以上の原油価格が必要とみられている。このように考えると、できれば60ドル超の原油価格が欲しいのが主要産油国の本音であろう。

一方、現時点で原油価格が低迷している背景には、米国内の石油掘削リグ(装置)稼働数が増え続けており、米国の産油量が増加することで、世界の石油需給が改善しないとみている市場参加者が多いことが挙げられる。直近の米国内の石油掘削リグ稼働数は、前週から8基増の720基となり、2015年4月以来の高水準となっている。

増加は18週連続となり、 連続記録としては過去2番目の長さとなっている。また、水準も前年同週の318基の2倍超となっている。このような傾向をみれば、今後の米国内の産油量の増加は不可避と考える向きが多いのも仕方がない面がある。

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