好奇心で得た「薄く広い知識」は、後で役立つ マネックス松本大氏のユニークな「目的意識」

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松本でも、実は外資系の会社にいたときよりも、マネックスを創業してからのほうが、一気に英語力が上がりました。創業後は英語を使う量が100分の1以下に激減しましたが、ひょんな縁でダボス会議に行けることになって、行ったら金融や宗教、あるいは芸術と、参加者が多種多様な話をしているわけですよ。ボキャブラリーがないので全然意味はわからないんですけど、その後から急に英語がメキメキ伸びました。外資系証券会社にいた12年間よりも、マネックスを作った最初の1年半で極端に英語ができるようになりました。

なぜかというと、英語はコミュニケーションツールなので、異なる環境に行けば伸びるんです。たとえば小さな子どもがずっと母親とおばあちゃんといたら、特になにも言わないでも牛乳を持ってきてもらえます。ところが保育園に行くと、何か主張しないと自分の意思が伝わらない。結局、異なるところに出て何かをやらない限り、コミュニケーション能力は上達しないということです。

同質な仲間と同質なところにいてもダメ。コミュニケーション能力ってもともと人間に備わっていて、それが生きるために覚醒するかしないかの問題だと思うんです。外に出て「異」なものに出会い、その能力が必要になると、飛躍的に伸びるものです。

自分が「苦手」だと思ったことにどう対応してきたかを語り合う鬼頭氏(左)と松本氏(撮影:梅谷秀司)

鬼頭確かに自分が「できない」と思っていることが、今まで「やらなかっただけ」だったということは、私も経験しました。弁護士をしていた時にはエクセルやパワーポイントもまともに扱えなかったのに、いざ転職して起業すると、当たり前のように操作できたり人に教えることができました。英語など、どの勉強も実は同じことで「苦手だ」という思い込みが、「やってみる」ことから、さらに遠ざけてしまうのかもしれませんね。

好奇心でいろいろやった事が、後で役立った

松本あとは机の上の勉強とは別に、すごく好奇心旺盛でした。中1のスキー学校ではお酒を持ち込んでばれて始末書を書いたり、雪山に1人で写真撮影に行ったのはいいがビビッて帰ってきたり、そんな脈絡のない好奇心ですけれど。でも、それで、"雑学博士"のように薄いながら色々なことをかじっていたのが、大人になって自分の仕事がだんだんと定まってくる中で動員されてきたり、というのはありますね。スティーブ・ジョブズの言う「コネクティング・ザ・ドッツ(点と点をつなげる)」のようなものですね。

英語ができないから、と外資系証券会社に入ったら、結果としてネット証券会社を起業して今のようになったのもそう。もうね、人生はどうなるかわからない。「夢を持て」と言われますけれど、僕は夢を持っていなかったし、何となく医師や物理学者になりたいと思っていましたけれど、それもあっさり捨てましたし。

鬼頭私の周りには資格試験の勉強に励む人がたくさんいます。皆さん「資格を取得する」という目的意識が明確です。私自身も、目的があるからがんばれるし、やり切れるタイプです。ただ松本さんの話を聞いていると、あっさりと人生の方向を転換している印象を受けます。それほど深刻に目的意識を持ちすぎないほうが、むしろうまくいくという考えでしょうか?

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