好調カプコン、5期連続増益に秘策はあるか 辻本春弘社長が分析、スイッチ攻略法とは?

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――今期の柱となるのは「アイアンマン」や「スパイダーマン」といった米マーベル社の人気キャラがカプコンのキャラと戦う格闘ゲーム『マーベルVS. カプコン』の新作だ。今作は6年ぶりの復活タイトルとなる。カプコンはここ数年休眠タイトルの再活性化を進めているが、その一環か​。

今作については、共同開発をしているマーベル社が今年新作映画を公開するので、そこに合わせた。カプコンが独自で判断したわけではない。休眠タイトルの復活は進めていきたいが、対応しなければいけない課題が多い。

その1つが人手不足だ。開発者の採用を強化しており、育成も順調に進んできているものの、ゲーム業界の進化は非常に速く、もっと開発者が必要だ。既存タイトルの新作に加えて、休眠タイトルの再活用、さらには完全新規タイトルの開発までやろうと思うと人手が足りないのが実情だ。

eスポーツには業界全体で取り組む

――スマホゲーム分野を収益事業にできていないことも課題だ。どのように打開するか。

ここ数年、『モンスターハンターエクスプロア』など数タイトルを運営することで経験が蓄積されてきた。その結果わかったのは、面白いゲームを作ることができていて、遊ぶユーザーも多いということ。それはダウンロード数や継続率といったデータに出ている。

では、なぜ収益につながっていないかというと、課金率が低いから。スマホゲームにおける課金経験の少なさが課題ということがわかってきた。そこで、今は他社との協業を考えている。スマホゲームの運営に長けた会社と組むことができれば、弱点を補完することができるだろう。もうすでに協業の話は来ており、水面下で話を進めている段階だ。

辻本春弘(つじもと・はるひろ)/1964年にカプコンの創業者である辻本憲三氏の長男として生まれ、1987年にカプコン入社。アミューズメント施設運営事業や家庭用ゲームソフト事業などを経て2007年より現職。好きなゲームは『バイオハザード』(撮影:尾形文繁)

――決算発表後に開かれた説明会で、辻本憲三会長兼CEOは「日本はeスポーツ(ゲームを使ったスポーツ競技)への取り組みが遅れている」と話していた。どのような危機意識があるのか。

海外では、eスポーツは新たな産業として広がりつつあり、プロゲーマーという職業も生まれてきている。カプコンも海外でeスポーツへの取り組みを本格化させており、『ストリートファイター』シリーズの大会を行ってきた。

しかし、日本においては行政や法律の壁が大きい。特に景品表示法。これがあるために、日本では賞金の高い大会を開くことが難しい。

カプコン単独ではなく、業界団体であるCESA(一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会)が主体となって取り組む必要がある。まずは今年9月に開かれる東京ゲームショウでeスポーツを前面に打ち出していきたい。

渡辺 拓未 東洋経済 記者

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わたなべ たくみ / Takumi Watanabe

1991年生まれ、2010年京都大学経済学部入学。2014年に東洋経済新報社へ入社。2016年4月から証券部で投資雑誌『四季報プロ500』の編集に。精密機械・電子部品担当を経て、現在はゲーム業界を担当。

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