「教育技術」で子どもの成績は向上するのか 米国の学校で導入進むエドテックの実力は

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STマスを使い始めてから6年。ベルト氏は、「この学区の生徒の成績はつねに高かったのですが、STマスを使い始めてからさらに上がった。ほとんどの教員が生徒の理解度が上がったと感じている」と話す。

ただし、ベインブリッジ学区では、小学校の理科など一部の教科では、エドテックを取り入れていない。理科や科学は、実践学習を基礎とするものなので、コンピュータによる指導は必要ないというのが理由だ。

教科書はまったく使わなくなった

とはいえ、この5年間で教科書はまったく使わなくなった。購入するのは主にオンライン教材で、たまにオンライン教材に「教科書」が付録としてついてくることがある。5年前に幾何学の教科書を購入した際には、ソフトが付録だったが、真逆のことが起こっているのだ。「ごく短期間のうちに、すべてがオンラインに変わってしまった」とベルト氏は言う。

実際、オンライン教材は便利だ。教科書は古くなれば新しいものに買い替えなければならないが、オンライン教材ならすぐにアップデートできる。今でも教室や図書館に教科書を保管しているが、好んで使うのはごく一部の生徒だ。

とはいえ、米国の学校では子どもが好き放題に、スマホやコンピュータに触れることを推奨しているわけではない。実際、ベルト氏の学区では、子どもがスマホやテレビ、ゲームなどを使える「スクリーンタイム」を制限しており、保護者にも制限を設けるよう、推奨している。

ジョンソン・エンド・ジョンソンが傘下のオンラインメディア企業ベビーセンターの調査によると、「メディア」の過剰な消費は注意欠如、多動性障害、攻撃的な行動につながる可能性がある。「教育にいい」とされるものも含めて、ビデオゲームは生徒たちの集中力低下を招くという指摘もある。教師の多くは子どもの注意を引くためにより強い刺激を生徒たちに与えようとしているが、これがさらなる集中力の低下を招くという悪循環を起こしかねない。

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