東京に「ご当地焼き鳥」が続々と集まる理由 居酒屋不況の中で気を吐くジャンルの新潮流

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「以前から神田で物件を探していたのです。それも駅前ではなくて少し離れた立地。夜の飲み屋としての需要がある地ながらも、わざわざ行くような隠れ家的な立地。それが今回、ようやく見つかったというわけです」。かわ屋の広報担当者は話す。

福岡では気軽に「かわ焼き」を1人10本以上味わう(写真:筆者提供)

メニューを見れば、メインは「かわ焼き」。首の回りの皮を用い、余分な脂や血合いなどを一枚一枚丁寧に取り除く下処理をしたのち、串に巻きつけてから刺し、を繰り返し、焼き、タレつけ、冷蔵庫で寝かし、を6日も繰り返して完成する独特の串は、外がカリッと、中がもっちりで、独特の味わい。これを本場、福岡では1人で10本味わう来店客が珍しくないのも当たり前だ。

実は、仕込みは、ときわ台のセントラルキッチンで行い、各店舗に配送するシステム。その意味でも中間地点となる神田は、立地的にもうってつけの場所だ。「今後はFC展開も視野に入れて、徐々に店舗を増やしていきたい」(広報の森川晃行氏)。とはいえ、現在のセントラルキッチンでの仕込みはほぼ限界。店舗拡大のためには、今後はさらに大きな工場を建設するのと、焼き手の育成が課題となる。

「つぼ八」の新業態「新八」の新子焼き。まだ3店舗だが、広がりを見せるか(写真:筆者提供)

「かわ屋」に限らず、ここ数年、全国からご当地焼き鳥が東京へと進出する動きが目覚ましい。筆者が名誉館長を務める、全国7大ご当地焼き鳥が集結した東京・大手町のご当地焼き鳥テーマパーク「全や連総本店 TOKYO」もその1つだが、ほかにも「つぼ八」が別業態で、板橋区役所前に、旭川の新子焼きを提供する「新八」をオープンしたり、愛媛県今治市出身の店主が、曙橋に今治焼き鳥がメインの「TORYU」を立ち上げたり。また、上野の「ふくまめ」のように、メニューの中に香川名物「骨付鶏」を加えるという流れも見られる。

ご当地焼き鳥が続々と集まる3つの要因

では、なぜいま、東京に、ほかのご当地グルメよりも、特にご当地焼き鳥が続々と集まるのか。実はそこには3つの要因があると筆者は分析している。

第1に、メジャーな焼き鳥という料理の中に、ご当地という独創性が存在しているという点。「マジョリティ(メジャー)」の中の「オリジナリティ(独創性)」ゆえに、略して「マジョオリ」とも呼ばれる概念。つまりは、メジャーな焼き鳥という、誰もが知っている料理という安心感が根底にあり、そのうえに独創的なタイプが紹介されるというのが、安心感と個性の共存で、多くの人々に「スッ」と受け入れられやすかったというわけだ。

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