(第23回)近現代日本人数学者列伝~イントロダクション~

桜井進

 前回までの和算シリーズに続き、今回から現代日本の数学者を紹介していきます。自然科学に位置づけられる数学という学問は日本では広く一般に知られていません。数学が他の自然科学や工学系の分野に比べて著しく異なる特徴をもつことがその原因と考えられます。数学以外の理工系分野は、ノーベル賞があるおかげで日本人の受賞者が選ばれると国内で少なからず話題になります。ではもしノーベル数学賞があれば事情は変わるでしょうか。新たにノーベル財団が数学賞を設けるなどと発表すれば話題にはなるでしょうが、なにも変わらないと思われます。
 数学にはノーベル賞よりも厳格な基準をもつフィールズ賞という最高位の賞があり、それを受賞した日本人がアジアで最も多い3人であるにもかかわらず話題にされなかったからです。フィールズ賞は4年に一度、4人まで、40歳以下という条件を満たす数学者に与えられます。ノーベル賞は年齢制限がないので老いてからの栄誉ある受賞は珍しくありません。それに比べて数学のフィールズ賞は現役の若手研究者に与えられます。このようなフィールズ賞を日本人が獲得している事実をどれだけの日本人が知っていることでしょうか。受賞者を国別でみてみると圧倒的にアメリカ、ロシア、イギリス、フランスが多いです。アジアの中では中国が1名と日本の3名だけです。このような賞の受賞者がいるにも関わらず日本では一般に話題にならないのです。
 例えば物理学の場合はその研究対象が宇宙であったり、物質のしくみであるので難解であるとはいえ一般に知られることになります。またその応用は著しく社会に応用される実利的側面も持ち合わせており、それなりに(数学よりははるかに)一般に伝えられることにもなるのでしょう。それに対して数学は、研究対象と実利的側面の双方がわかりづらいことが相まって広く一般に伝えられてこなかったといえます。

 このシリーズでは日本の数学が世界の中で大きく評価され貢献してきた歴史を紹介していきます。世界をリードする独創的研究がなされてきたことを少しでも知っていただきたいと思います。
 とりあげる数学者は7名、私の独断で選びました。日本人数学者の実像に業績のみならず、人物の面でも迫っていきます。歴史的に眺めていくことで日本という国の実力が垣間見えてくることを期待しています。

高木貞治(1875~1960)
近世日本初の国際的数学者、代数的整数論、類体論の創始者
岡潔(1901~1978)
多変数複素函数論、上空移行の原理、不定域イデアルの理論
小平邦彦(1915~1997)
日本初のフィールズ賞受賞者、調和積分論
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