アマゾンが他サイトでの決済に乗り出す思惑 もはや市場はオンラインだけじゃない

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アマゾンペイは、たとえば雑誌の定期購読やソフトウエアの利用など、サブスクリプション的な支払いに利用することも可能。ソフトウエアの場合は、毎年更新という場合も多いが、年1回しか利用しないサイトでIDやパスワードを思い出すのは至難の業だけに、アマゾンと同じものが使えるならば利用者にもメリットがある。将来的には電気代や携帯電話代、あるいは、スポーツジムや習い事の月謝などへの利用も考えられるだろう。

一方、事業者側にとってのメリットは大きく4つある。1つは、アマゾンの利用者を、自社サイトで取り込めること。つまり、新規顧客の獲得である。ショッピングサイトで気に入ったものを見つけても、新規登録するのが面倒で買わなかった、という経験がある人も少なくないだろうが、アマゾンペイを導入していればこのハードルは低くなる。

顧客が気にするのは価格ではない

パトリック・ゴティエ/米アマゾン副社長。2015年、米ペイパルからアマゾンに移り、ID決済事業を統括する(撮影:大澤 誠)

「新たに登録するという面倒さだけでなく、決済にアマゾンを利用できるという点でセキュリティ上の安心感もある。こういう点で、20年間ビジネスをやってきた信頼感が生きる」とゴティエ副社長は話す。

「米国で調査して、利用者が特定のサイトで買い物をする理由は、価格でも商品のセレクションでもないことがわかった。最も大事なのは、過去の経験から(そのサイトが)信頼できるかどうか、ということだった。人は機能だけでなく、感情的に”使いやすい”というものに引かれる」

これに伴って、コンバージョン率(購入完了)の上昇も見込める。業種にもよるが、アマゾンペイ導入によってコンバージョン率は「30~70%アップする」という。

「質の高い顧客データを手に入れられるメリットもある」とゴティエ副社長は話す。確かに事業者側は、顧客の同意を得てアクティブなネット利用者の名前や住所、メールアドレスなどを入手することが可能。ただし、アマゾンでは性別や年齢などまで取得していないので、こうした情報は手に入らない。この点、事業者は気にしないのだろうか。

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