加計学園"総理のご意向"文書「流出」の舞台裏 背後に見え隠れする「麻生vs菅」の構図

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これは松野博一文科大臣から内閣府に対し、「①平成30年4月開学は必要な準備が整わないので、平成31年4月開学を目指すべきではないか、②麻生(太郎)副総理や森英介(衆院)議員などの反対派がいる中で党内手続きをこなすためには、文科・農水・内閣の合同部会ないしはPTを設置すべきではないか」などと問い合わせたことへの回答文だ。

内閣府の回答文は、①早期開学は「総理のご意向」、②「国家戦略特区諮問会議決定」という形にすれば、総理が議長なので総理からの指示に見えるのではないか、③以前に官邸から「内閣」としてやろうとしていることを党の部会で議論するなと怒られたので、内閣府は質疑対応はするが、党内手続きについては文科省が政調(党政務調査会)と相談してやってほしいなどと回答。官邸が独断で推し進めようとしたことを記している。

「学校ありきでやっているという誤解を招く」

「10/4義家副大臣レク概要」と題された文書には、農林水産省が管轄すべき獣医学部定員の基礎となる獣医師の受給バランスについて斎藤健農水副大臣が「何も聞いていない。やばいんじゃないか」と反応し、農水省が門外漢であったことを示唆。また「10/7萩生田副長官ご発言概要」(※この文書のみ、「取扱注意」になっている)で、「平成30年4月は早い。無理だと思う」「学校ありきでやっているという誤解を招くので、無理をしない方がいい」と、安倍首相に最も近いひとりとされる萩生田光一官房副長官ですら消極的な見解を述べている点が興味深い。

また松野文科相も萩生田副長官も、定員増員に強く反対する麻生副総理に配慮して、2016年10月23日の衆議院福岡6区補欠選挙の後で加計問題を処理すべきだと主張した点に注目したい。鳩山邦夫衆議院議員の急逝により行われた同補選では、邦夫氏の次男の二郎氏と林芳正元農水相の秘書の蔵内謙氏が立候補し、自民党系がまっぷたつに割れた。

鳩山二郎氏を応援したのは、邦夫氏と交流があり「きさらぎ会」の顧問を務める菅義偉官房長官。これに二階派の武田良太衆院議員に加え、小池百合子東京都知事も応援に駆け付けた。

一方で麻生氏が応援したのは県議を8期務める蔵内勇夫県連会長の長男の謙氏で、その力の入れようは尋常ではなかった。麻生副総理は選対の本部長に就任するのみならず、長年の宿敵であった古賀誠元自民党幹事長を顧問に迎えている。

それ以上に重要なことは、蔵内勇夫氏が日本獣医師会の会長である点。要するにこの時の闘いの構図は「麻生vs.菅」で、その背後には獣医利権もあったと読み取ることができる。

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