「発達障害」の栗原類を潰さなかった"母の力" なぜ彼は社会で活躍できるようになったのか

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最初に始めたのは「おうちのお手伝い」程度のものからです。掃除機をかけるとか、ゴミ出しをするとか、洗濯物をちゃんと選り分けたうえで洗濯機を回す、洗濯物を干す、洗濯物を取り込んで畳む、おふろの掃除、料理をするなど、私が教える時間をつくれるときにだけ、無理のない範囲で手伝わせていました。当然毎日ではないので、なかなか手順は覚えませんから、横で次はどうすると具体的な手順を指示してやらせます。それは何年経ってもそうでしたし、今でもほとんどそうです。

ただ、長い時間をかけて教えながら、やらせてみてわかったことがあります。それは本人には得意不得意があり、親子で分担する際に、積極的に本人が得意な部分をやるようになったこと、類は何が苦手なのかということ。

料理は好きだけどなかなか手順が覚えられない、洗濯物を干すのは苦にならないけど畳むのは苦手。だから「洗濯物は僕が干すから、畳むのはやってほしい」とか、私が疲れていて料理するのが面倒くさいという日は「手伝うから(僕がやるよとは言わない)一緒に作ろう」という風に、本人ができること、苦にならないことが把握できるようになりました。

「長い時間をかけて教えながら、やらせてみてわかったことがあります」(泉さん)

ひとり暮らし体験の期間を増やしていく

そして、1日でも早くひとり暮らしができるように、少しずつ練習をするようになりました。まずは、私がひとりで旅行に行く。最初は3日程度からはじめて、今は1週間くらい私が留守にしても大丈夫なくらいにはなってきました。まだ、息子の仕事が忙しくないタイミングを選んで旅行に行くようにしていますが、最初は3日間でも、お総菜を何種類も冷蔵庫にストックしておいたりしましたし、1週間の旅行でも、冷蔵庫に入れられるだけお総菜を何種類も作っておいたりしていました。だけど、この数カ月は、「お総菜なしで、ごはんは毎日3食、自分でなんとかしてみる」と言い出したので、おかずの作り置きもしないで、旅行に行くようにしています。

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