「はっきり内容を覚えている夢」の持つ役割 しっかり眠れているかどうかがわかる

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一方、「脳も体も眠っている」深いノンレム睡眠中は、夢を見ても運動野の細胞は活性化することはありませんし、大脳の各部位の連携もよくありません。

なので、たとえ夢を見ていても、深いノンレム睡眠で急に起こされると、大脳は働いていないのでしばらくぼーっとしてしまい、いわゆる「寝ぼけた」状態になってしまうのです。

なので、起きた直後、「抽象的でよくわからない」夢を記憶しているときは、ノンレム睡眠で起床したと考えられます。これは、「人はレム睡眠のとき、自然に目覚める」パターンから外れているので、こういった夢を何度も覚えている際は、眠りのパターン自体が悪い可能性もあります。

「『寝不足に悩む』人が知らない眠り方の新常識」(4月7日配信)で紹介した眠りの質を高める方法や、「『14時頃に眠くなる人』が知らない睡魔の正体」(4月14日配信)で書いたレム睡眠で起きやすくなる「アラームセット法」などで、眠りの質を高めるアプローチを試していただければ、と思います。

逆に、起床時に覚えている夢が鮮明でストーリーのあるものであれば、レム睡眠中やレム睡眠の直後に自然と覚醒できたことになります。

「夢はたくさん見たほうがよかった」という新事実

無意識レベルにはなりますが、実は「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」が入れ替わるごとに、夢の内容も切り替わっていることがわかっています。
なので、夢をみた回数が多いほど、(通常一夜で4~5回生じる)レム睡眠とノンレム睡眠のスリープサイクルがきちんと回せていることになり、そういった意味では一晩でたくさんの夢を体験するのが自然の眠りであるといえるでしょう。とはいえ、これはなかなか意図してできることではありません。正常なリズムどおりの睡眠がとれていれば、人は8~10回ほど、別々な夢の世界を旅していることになるわけですが、なんとも残念なことに、しっかり眠れば眠るほど、最後の夢以外は忘れてしまっているのです。

「見たい夢を見たい」という人にも、これまでたくさん出会ってきました。「見たい夢を見る」――荒唐無稽な、それこそ「夢のような話」に聞こえるかもしれませんが、実は科学的に「見たい夢を見る」ことに挑戦した記録があります。

「好きな夢を見ることはできるのか」が盛んに研究されたのは、1950年代の「夢見る」とされたレム睡眠発見の直後。今では信じられないような実験が、当時は真剣に行われました。

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