iPhoneが変える!? 波乱の携帯ビジネス ついに日本に上陸

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アップルが採用した日本型奨励金モデル

ドコモをはじめとする通信事業者(キャリア)主導による端末開発が主流の日本の携帯業界にアイフォーンを引っ提げて現れたアップルは、“黒船”とも呼ばれている。

マックやiPodで積み上げてきたコアなファンをベースに、独自のサービスを積み上げているのがアイフォーンの強みだ。「ハードとソフトとサービスをひっくるめて、一つの商品に仕上がっている点が今までにない新しさ。ビジネスモデルの完成度は高い」(宮川潤一・ソフトバンクモバイル取締役→関連記事)。

アップルは、さまざまな形で収入を得るビジネスモデルを築いている。初代アイフォーンでは2年間契約という縛りがあったうえに、599ドル(その後399ドルに値下げ)という割高な小売価格を設定。さらに、キャリアがユーザーから毎月得る通信収入の数十%を徴収する「レベニューシェア」という仕組みを敷いてきた。さらに、iPod向けの楽曲販売でも稼げる。つまり、ハード販売、レベニューシェア、楽曲販売の3本が収入源だった。

新アイフォーンでは、端末価格を199ドル(米国)へ値下げした。これによりアップルの利益が減ってしまうのかといえば、そうではない。米調査会社アイサプライの調べによると端末販売の際、1台ごとに300ドルの奨励金(助成金)をアップルへ支払う。実質的な小売価格は499ドルであり、値下げにはなっていないのだ。同社の試算だとハードウエア部品代と加工費の合計が約174ドルであり、かなり高い利益率だ。

この奨励金モデルは、ソフトバンクが割賦販売モデルで採用している特別割引とそっくりだ。ソフトバンク幹部は「アップルは日本の携帯ビジネスモデルのことを詳細まで把握していた」という。「新しいプラットフォームや機器を出すときに、安く売ってスタートダッシュをかけるのは当たり前のこと」(増野大作・野村証券金融経済研究所主席研究員)。確かに、奨励金モデルは、ユーザーのエントリーコストが安くなるため、飛びつきやすい。アップルの戦略はピタリとはまったと言えるだろう。

端末価格を下げることで普及の後押しにはなるが、一方のキャリアにとっては売れば売るほど負担になる。そのため、アップルはレベニューシェアの負担を軽減し、長期的にはキャリアのメリットが出るビジネスモデルを設計しているようだ。

その分、アップルには新しい利益源が付け加わっている。一つがアプリケーションソフトの販売手数料だ。アップルは3月にアイフォーン用のソフトウエア開発キットを無償公開。アイフォーン向けのソフトを誰でも自由に開発できるようにした。ただし開発したソフトを販売する場合には、iTunesストアに設けた「App(アップ)ストア」から売らなければならない。この際、アップルは販売価格の3割を流通手数料として得る。アップストアからのダウンロードは7月10日の開設から最初の4日間で1000万件を突破しており、これが大きな利益源になることは間違いない。

さらに、マイクロソフトのエクスチェンジサーバーとの連係機能を持たせ、個人向けに新規メールやスケジュールの更新を定期的に配信するプッシュサービス「モバイル・ミー」も開始。これは年額9800円。サーバー運営などそれなりの経費もかかるが、こちらもまた新しい利益源に育っていくはずだ。

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