米国で出た「UFO目撃情報誌」の気になる中身 世界初?研究者待望のUFOガイドブック

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2人は16カ月にわたり、週末になるとリビングルームのパソコンで目撃証言から数字をはじき出したり、図表に場所を書き入れたりといった編集作業にいそしんだ。リビングルームは築100年の自宅の2階にあり、家の中でいちばん暖かい部屋なのだという。

シェリルはもともと地元情報紙のウェブサイトにUFO情報に関するブログを寄稿していたが、2人は全米規模で目撃情報の共有を行いたいと考えた。「情報公開に一役買いたかった。本来なら政府がやるべきことだったが」とシェリルは言う。

週末の過ごし方としては変わっていると思われかねないのは2人とも承知のうえだ。だが自らもUFOの目撃経験がある2人には、UFOに対する偏見を取り除きたいという思いがある。

「私たちがやっているのは科学的研究だ」とシェリルは言う。「研究を見ようとしないことのほうがおかしい」。

人生の伴侶との二人三脚で共著を完成させるまでに、シェリルは幾多の紆余曲折を経験してきた。ベトナム戦争で米軍の保線要員を務め、その後は米海軍の潜水艦部隊にいたシェリルが、性転換手術を受けて女性になったのは1980年代のことだ。得度を受けて仏教の尼僧にもなった。リンダと出会ったのはメリーランド州で劇団を主宰していた時で、2011年に2人は結婚した。

UFO研究の世界では大歓迎された出版

この本の出版は、UFO研究の世界では大歓迎された。

「このガイドブックの出版は、地球外生物の現象は今も衰えず続いていることを社会とメディアに再認識させるきっかけとなった」と語るのは、UFOに関する公的記録の開示を求めてロビー活動を行っているパラダイム・リサーチ・グループのスティーブン・バセット専務理事だ。

UFOは昔ほど目撃されなくなっているという一般的な認識とは異なり、この本によれば目撃情報は波状に増えている。2001年の目撃件数3479件に対し、2015年は1万1868件に達したのだ。MUFONやNUFORCに寄せられる目撃情報は、実際の目撃例のほんの一部にすぎない。

UFO愛の結晶とも言えるこの本が扱うのは、基本的に目撃情報の数だけ。何が起きているのかについての推測はあえて避けている。「私たちには本当のところはわからない」とリンダは言う。「だが、目撃者たちがこういった(UFOらしき)ものを見たのは間違いない」。

政府は1968年、目撃例の約30%は説明がつかなかったにもかかわらず「調査に値する重要なものは何もない」としたコロラド大学の「コンドン報告書」をもってUFO研究に終止符を打った。

だがMUFONのボランティア調査員500人は、寄せられる目撃情報の多くについて調査を続けている。MUFONの広報担当者によれば、マンハッタンにおける2002~2016年の目撃例270件についても調査を行い、このうちUFOである可能性以外の説明がつかなかったものが44件あったという。

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