歯止めかからぬ大型車不振 トヨタも減産強化、底なしの北米市場

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 一方、米国で好調なのが、燃費に優れる小型車だ。ハイブリッド車の「プリウス」は納車が半年待ち。07年に37万台を売った量販車「カローラ」も、今年1月の全面改良効果が続く。「在庫が膨らむ大型車と供給不足の小型車のミスマッチ」(クレディスイス証券の遠藤功治氏)こそが今回の生産再編をもたらした。

ミスマッチ解消に向け、トヨタも舵を慌てて切った。13億ドルを投じるミシシッピ工場で、07年に表明していたSUV「ハイランダー」の生産計画を、今回「プリウス」へ変更したのがそれだ。ミシシッピ工場はすでに建屋を造っているが、生産ラインの敷設はまだ。「金型の設計変更はあるが、当初の投資計画の範囲で済む」(トヨタ幹部)とひとまず胸をなで下ろしている。

米国で多くの自動車メーカーが不振に陥る中でも、ホンダの健闘は目立っている。今年1~6月の販売台数で、トヨタは6・8%減、ビッグスリーも1~2割減。片やホンダは4・1%増と、上位6社の中では唯一プラスを維持した。同社の小型車「シビック」は車種別販売ランキングで、5月に初の首位に立った。今秋からは米インディアナの新工場で、「シビック」を年間20万台生産。カナダ工場でのピックアップトラックの生産を他工場へ移し、09年から「シビック」増産に充てる。「トラック専用のプラットフォームを持っていないので、工場の大幅なライン改修なしに小型車も造ることができる」(ホンダ関係者)ことが機動的な増産を可能にした。

市場は13年ぶり低水準 ビッグ3に漂う暗雲

もっともホンダは例外。それに小型車は伸びても、利幅は大型車の5分の1程度でしかない。今年1600万台割れを覚悟した業界では、「1500万台を切るかもしれない」(浦西徳一・トヨタ紡織会長)と、13年ぶりの低水準も見えてきた。

事態の深刻なGMやフォード、クライスラーは、ブランド売却や海外部門分離、資本提携まで含めた救済策すらうわさされる。下げ止まりの見えない米国自動車市場は、一段と暗闇が増している。

大野 和幸 東洋経済 記者

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おおの かずゆき / Kazuyuki Ohno

ITや金融、自動車、エネルギーなどの業界を担当し、関連記事を執筆。相続や年金、介護など高齢化社会に関するテーマでも、広く編集を手掛ける。

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