英メイ首相が6月総選挙にカジを切った理由 対決しようとしているのは強硬派か穏健派か

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メイ首相が突然、総選挙を決めた理由とは?(写真: ロイター/アフロ)

テリーザ・メイ英首相は慎重で抑制の利いた政治家として知られる。何せ英国国教会司祭の娘だ。リスクを冒してまで安全地帯から踏み出すような人間ではない。だからこそ、総選挙を2020年の予定から前倒しする考えはないと彼女が繰り返し語ったとき、そこには真実味があった。

メイ首相の方針転換

そのメイ首相が6月8日に総選挙を行うと表明したことは、驚きをもって迎えられた。だが、首相の方針転換は、多くの人が考えているほどショッキングな出来事ではない。むしろ論理的な行動だ。なにしろ世論調査の支持率で、メイ首相率いる与党保守党は野党労働党に20ポイントもの差をつけているのだ。

政治家は最も勝算があるタイミングで選挙に打って出るものだ。メイ首相はEU(欧州連合)とタフな交渉を今まさに始めようとしているところで、選挙での圧勝が予想されている。

解散には至らなかったが、私も似たような意思決定にかかわったことがある。1991年のことだ。ジョン・メージャー政権下、私は保守党で選挙対策の責任者だった。湾岸戦争に勝利し、サダム・フセイン率いるイラク軍からクウェートを解放した直後である。

自国が関与した軍事的勝利に英国は熱狂しており、多くの政治評論家や支持者が当時のメージャー首相に解散総選挙を促した。だが、彼はそれを拒んだ。湾岸戦争の勝利は英国全体の勝利であり、一政党が独り占めにすべきではないとの考えからだ。その判断は正しかった。メージャー首相は翌年、予定どおりに行われた総選挙に勝ったのだ。

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