東電、なぜ型破りな「再生計画」が必要なのか 原発再稼働が前提、史上空前の利益シナリオ

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新たな再建計画を発表した東京電力ホールディングスの廣瀬直己社長(左)。これまでにない高い利益目標は、逆に同社の厳しい経営環境を物語っている(撮影:田所千代美)

東京電力ホールディングスは5月11日、50%強の株式(議決権ベース)を握る原子力損害賠償・廃炉等支援機構(以下、機構)と共同で策定した「新々・総合特別事業計画」(いわゆる新々総特)を明らかにした。福島原発事故に伴う廃炉・賠償費用が総額22兆円と倍増する見通しとなったことを踏まえて作り直したもの。国による東電に対する資金支援の総枠は、従来の9兆円から13兆5000億円に拡大する。

だが、今回の再建計画に並べられた数字は、これまでの延長線上での努力で達成できるレベルではない。

従来からの合理化努力に加えて、柏崎刈羽原発の再稼働(最大で7基)、送配電や原子力分野での他社との「共同事業体」設立を想定。現状年約3000億円の廃炉・賠償費用を約5000億円と見積もり、それを自力で賄ったうえで、10年以内に前2017年3月期比3割増の3000億円超、10年後以降には4500億規模の連結経常利益達成を目指す。

計画未達なら国有状態が長引く

しかし、この4500億円規模の連結経常利益は、東電自身が過去に一度も達成したことのない水準だ(過去の最高益は2007年3月期の4412億円)。

新再建計画策定に関与した西山圭太・東電取締役によれば、「書かれた数値自体は他社との再編統合、海外展開など、数字の盛り込みが難しい課題もすべて実施して初めて実現できるかどうかというもの」だという。経済産業省から出向する西山氏は、「(数字の達成は)エネルギー行政の行方ともかかわっている。電力事業に関する制度の予見性がなければ、計画を書いても実現できない」と国にも注文を付けた。

収益力の向上が思うように進まない場合にはどうなるのか。東電が経営破綻に追い込まれることはないものの、国有化状態が長引き、国が投入した資金が回収できなくなる。

その際に鍵を握るのが柏崎刈羽原発の再稼働の行方だ。新再建計画では「2019年度以降」「2020年度以降」「2021年度以降」に、現在、安全審査を申請中の6、7号機を含む4基が順次再稼働していくシナリオ、および全7基が再稼働するシナリオの計6パターンを示している。

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